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田中将大の故障とタイブレーク導入。
「球数制限」と「選手層」の狭間で。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byAFLO
posted2014/07/21 10:30
現地7月9日にオールスター辞退、全治6週間の診断が下っているヤンキース・田中将大。はからずも直後に高野連によるタイブレークのアンケート計画が判明した。
ダルビッシュはイニング制限を支持。
ダルビッシュはこのタイブレークには興味を示していない代わりに、高校生のイニング制限を提案している。ツイッターにつぶやいた言葉を紹介しよう。
「学年別で1日に可能な投球回数を決めた方がいいと思います。1年5回、2年6回、3年7回って感じで。ベンチ入り可能な選手も18人から増やせばいいと思います。」
ダルビッシュの見識は見事というしかないが、球数制限やベンチ入り選手の増加は、即ち選手層の厚い有力私立校に有利に働くという考え方がある。1人の絶対的エースの連投や延長戦での力投があってこそ公立校は勝ち進むことができるのに、球数制限、イニング制限、連投禁止が定められたら私立の壁は今以上に高く厚くなる、これは公立校で指揮を執る監督なら誰でも一度は考えたことがあるはずだ。
高校野球では根強い完投主義。
タイブレークにしても球数制限にしても、誰もが納得する答えはない。田中将大の故障は実にさまざまな問題を投げかけたわけだが、この話題を冒頭で紹介したのは、この夏の地方大会で、プロ野球では当たり前になっている分業制(継投)がたいして行なわれておらず、1人の投手による完投を数多く目にしたからだ。
7月6日から7月16日現在までに見た夏の地方大会12試合のうち9イニングまで進んだのが8試合・16校あり、このうち1人の投手が完投したのは11校。完投率は実に7割近い。1人の投手が完投した高校は次の通りだ。
東東京 私立芝 (田中裕貴・3年)
埼玉 私立山村国際 (酒巻大輝・2年)
埼玉 私立花咲徳栄 (井上祐太・3年)
茨城 県立下館工 (谷中規彦・3年)
茨城 県立藤代 (竹内悠・3年)
群馬 私立樹徳 (ホジャティ博和・3年)
群馬 県立高崎東 (篠澤公輔・3年)
神奈川 私立横浜隼人 (橋本龍太・3年)
神奈川 私立横浜商大 (続木悠登・3年)
東東京 都立雪谷 (鈴木優・3年)
東東京 都立小山台 (伊藤優輔・3年)