詳説日本野球研究BACK NUMBER
田中将大の故障とタイブレーク導入。
「球数制限」と「選手層」の狭間で。
posted2014/07/21 10:30
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
AFLO
右ヒジじん帯の部分断裂でチームを離れることになった田中将大(ヤンキース)の周辺が騒がしい。
先日あるテレビスタッフに「なぜメジャーに行った日本人選手はヒジを故障するのですか」と聞かれ、日本球界と異なる「過労(中4日の投球間隔)、マウンドの硬さ、ボールの大きさ・感触の差」を要因に挙げた。
その翌日、スポーツ紙には「じん帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の最大要因はメジャーでは当たり前になっている中4日の登板間隔にある」と断言するダルビッシュ有(レンジャーズ)の姿が紹介されていた。ここでダルビッシュは、中6日に慣れ親しんできた日本人メジャーリーガーより中4日に慣れ親しんできたアメリカ人などのほうがじん帯を損傷する選手が多いと指摘、短い登板間隔の危険性を訴えている。
甲子園でのタイブレーク導入は是か非か。
件のテレビスタッフは話を高校野球のほうにも向けた。曰く「アメリカのマスコミで囁かれている高校時代の投げ過ぎが今回の異変の遠因ではないのか?」。
数日前のスポーツ紙は春・夏の甲子園大会でタイブレークが採用されることの可能性を報じていた。タイブレークとは延長戦では1死満塁の場面からゲームを再開するというもので、社会人野球の都市対抗、大学野球の明治神宮大会や大学野球選手権、高校野球の国体(国民体育大会)や明治神宮大会などで採用されている。
大学、社会人野球がタイブレークを採用するのは主に「時短」のためだが、選手層の薄い高校野球では投手の負担を軽くすることが最大の目的である。個人的にはタイブレークの採用には反対の立場をとっている。野球の醍醐味はチャンスメイクにあると信じているためで、ここを端折って1死満塁の場面を提供して、「さあ得点を挙げてください」と言うのは野球をわかっていない人の主張だと思っている。