ブラジルW杯通信BACK NUMBER
CBコンビがコロンビアをねじ伏せる。
それでもブラジルに立ち込める暗雲。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byGetty Images
posted2014/07/05 12:30
勝利を決定づける2点目を挙げたダビド・ルイスは「あんなFKを1年間通して待っていたんだ。チェルシーでプレーしていたときもね」とコメントしている。
ブラジルが挑み続けた、リスクを負う守備。
やはりブラジルにも通用する司令塔の創造性に活路を見出したコロンビアは、失点のショックを忘れて攻勢を強めた。しかし、その前にことごとく立ちはだかったのが、ブラジルのセンターバックコンビである。
日本代表にとっても課題とされた「積極的な守備」とは、何も長い距離を走って最前線からボールを追い回すことではない。
ブラジルの守備は、基本的には構える時間が長い。しかし構えたエリアにボールが入ってくれば、その瞬間に一歩前に出てアプローチを試み、確実に潰してカウンターにつなげる。相手が仕掛ける瞬間を察知すれば、持ち場を離れて“前”に踏み込むことをためらわない。失敗すれば21分のようなピンチを招くが、成功すれば先制点につながった攻撃を仕掛けられる。このリスクを負った賭けに挑み続けることが、ブラジルが見せる「積極的な守備」の手本である。
センターバックの2人はこの日、コロンビアの縦パスに対して何度も“前”に踏み込み、相手に体をぶつけ、ボールへのアプローチを繰り返した。チアゴ・シウバとダビド・ルイスが100%の相手ボールを100%のマイボールに、あるいは50%のルーズボールに変えた回数は、相手センターバックコンビのそれを圧倒している。
後半15分まで、1本のシュートも放たず構え続けた。
もちろんそうした意識は、ピッチ全体に浸透している。ブラジルのファウル数は今大会最多の「31」。しかしそのほとんどが「積極的な守備」の結果として生まれたものであることに、このチームの強さを垣間見ることができる。
そうした特徴が最もよく表れていたのが、後半立ち上がりの5分間である。チアゴ・シウバとダビド・ルイスが“前”に踏み込んで相手を潰した回数は、それぞれ2回。リードしているチームにとって最も危険な後半開始直後の時間帯でも「積極的な守備」を貫き、ブラジルは、選手交代によって流れを変えようとしたコロンビアに主導権を渡さなかった。
そうして後半15分まで、ブラジルは1本もシュートを放つことなく構え続けた。しかし主体的な駆け引きによる“我慢”の時間を経て、再び歓喜の瞬間が生まれる。69分、ゴール正面で得たFKを“無回転”でねじ込んだのは、ブラジルの真骨頂と言える「前へ」の姿勢を示し続けてきたダビド・ルイスだった。