ブラジルW杯通信BACK NUMBER
CBコンビがコロンビアをねじ伏せる。
それでもブラジルに立ち込める暗雲。
posted2014/07/05 12:30
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph by
Getty Images
感情を押し殺して、努めて冷静かつしたたかにゲームを進めたブラジルの完勝だった。義務付けられた世界制覇を目指す王国の戦いは4日の準々決勝、指揮官が「チリよりも強い」と警戒していた難敵コロンビアを2-1で退けたことで、また一歩前進した。
結果だけを見ればあまりにも順調なブラジルの戦いは、しかしその勢いとは裏腹にチームに対する不安を膨張させるばかりである。
試合前日の記者会見でやり玉に挙げられたのは、キャプテンのチアゴ・シウバだ。国歌を歌って泣く。PK戦の前にも後にも泣く。“涙もろすぎるチーム”の先頭に立つ世界最高のセンターバックは、チリ戦の延長後半に招いたピンチの対応のまずさ、さらにPK戦直前にチームの輪を離れてキャプテンとしての責任を放棄したとして叱責された。国内最大のスポーツ紙『ランセ』は、「立ち上がれ、キャプテン!」との見出しでピッチにひざまずいて泣きじゃくる彼を皮肉った。
「君の振る舞いはリーダーとして問題があるのではないか」
「君の振る舞いには、リーダーとして問題があるのではないか」
記者会見の席でそう指摘されたチアゴ・シウバは、毅然とした態度でこう言い返した。
「そういう意見には耳をふさぐことだ。監督は僕のそばにいて、いつも信頼してくれている。だから、周囲の人が何と言おうと気にしない。(泣くことについては)これが僕だ。とても感情的で、それが僕にとって自然なこと。ピッチ上で影響することはない」
彼にとってコロンビア戦は、自身の正当性を証明するための90分間でもあった。果たしてブラジルは、彼と、彼の相棒ダビド・ルイスのゴールによって勝利を手にする。コロンビア戦はまさに、“彼らのゲーム”だった。