スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
GKの勇気と3バックのスリル。
~日本に足りないものを補うには?~
posted2014/07/05 10:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
大リーグがちょうど折り返し地点に差しかかったかと思ったら、ブラジル・ワールドカップのラウンド・オブ・16(決勝トーナメント1回戦)が終わった。困った。眠っている暇がない。
大リーグも気にかかることが多いが、今回はワールドカップに口をはさませてもらう。なにしろ、ノックアウト・ラウンドに入ってからというもの、接戦や熱戦が相次いでいるのだ。それも、ガッツあふれる試合が多い。8試合のうち5試合が延長に突入し、8試合のうちやはり5試合で、ゴールキーパーがマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたのだ。
5人のうち3人(オランダ対メキシコ戦ではメキシコのギジェルモ・オチョア。ドイツ対アルジェリア戦ではアルジェリアのアディ・エムボリ。ベルギー対アメリカ戦ではアメリカのティム・ハワード)は、負けたチームのGKである。奮戦、敢闘という古い言葉が反射的に浮かぶが、彼らがゲームをスリリングにしたことはまちがいない。
たとえばエムボリは、29本のシュートを浴び(うち、枠内が22本)、11本をセーヴした。ハワードに至っては、38本のシュート(枠内27本)を浴びながら、16本をセーヴしている。FIFAがセーヴ数を公表するようになったのは1966年以降のことだが、16セーヴというのは最多記録だ。
なかでも眼を惹いたのは、彼らの全走行距離だ。
ボクシングを見ているようだ、と私は思った。乱打乱撃を浴びながら、しぶといブロックと巧みなダッキングで相手のパンチをかわし、なかなか倒れないファイター。ハワードに応えて、アメリカの選手たちもよく戦った。
なかでも眼を惹いたのは、彼らの全走行距離だ。120分で15万4951m。当然ながら、相手のベルギーも14万7266mを走っている。決勝トーナメントで同じ120分を戦ったドイツが12万7420m、ブラジルが13万6334mだったことを思えば、アメリカの走行距離は半端ではない。つまり彼らは、最初から最後まで汗かきや水運びを厭わなかった。