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「ファームで勝利至上主義」の矛盾。
ロッテと阪神で考える二軍活用とは?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/07/03 16:30
この7月1日に、今季初の一軍登録となった阪神3年目・伊藤隼太。ファームでは今季57試合出場、打率.283、6本塁打、30打点という成績。過去2年間一軍では不発が続くが、ドラ1の意地を見せられるか。
翌日は一転、若手に出場機会を与えた阪神。
これを見ると、阪神のベテラン偏重はロッテ以上に深刻だ。さらにリリーフ陣の充実を図るため、今季39歳になる建山義紀(前アメリカ3A)を獲得するというニュースが耳に入ってもいた。阪神の迷走はどこまで続くのだろうか、
しかしそんな思いを胸にしまい、今度は1時間前に鳴尾浜球場に着いた翌25日。シートノックが終わってから発表された両チームのスターティングメンバーは前日とは様変わりしていた。
[阪神] [オリックス]
(三)西岡剛 29歳 (中)駿太 21歳
(中)緒方凌介 23歳 (指)川端崇義 29歳
(右)福留孝介 37歳 (遊)山本和作 27歳
(左)伊藤隼太 25歳 (左)バトラー 28歳
(一)陽川尚将 22歳 (捕)伏見寅威 24歳
(二)坂克彦 28歳 (三)奥浪鏡 18歳
(指)森田一成 24歳 (右)武田健吾 20歳
(捕)梅野隆太郎 23歳 (一)園部聡 18歳
(遊)北條史也 19歳 (二)三ツ俣大樹 22歳
(投)岩田稔 30歳 (投)吉田一将 24歳
18~21歳の野手を4人揃えたオリックスの若さには及ばないが、緒方、伊藤、陽川、梅野、北條という25歳以下の若手を揃えた阪神は十分魅力的だった。
暗黒時代の再現を恐れすぎてはいなかったか。
現在でも、阪神の育成体制への疑問の声は根強いものがある。また、タイガースの親会社、先ごろ開かれた阪急阪神ホールディングスの株主総会では、2人の株主からベテラン体質・トレード体質の球団に対して辛辣な意見が突きつけられたとのことだ。
そういう世間の阪神に対するさまざまな声が、ようやく現場の一、二軍首脳陣の耳に届いているのかもしれない。
私には阪神ファンの友人が多いし、私自身セ・リーグで最初に好きになった球団が1962(昭和37)年の阪神である。フロントや監督、コーチも、'87~'04年まで18年間続いた“暗黒時代”に逆戻りすることを恐れているのだと思うが、ファンだってあの出口の見えない暗闇に二度と戻りたくない。これまではその暗黒時代を迎えないための方法論が球団とファンとの間で温度差があった。
しかし25日のオリックス戦を見て、少しだけその距離が縮まったように思えた。