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「ファームで勝利至上主義」の矛盾。
ロッテと阪神で考える二軍活用とは? 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/07/03 16:30

「ファームで勝利至上主義」の矛盾。ロッテと阪神で考える二軍活用とは?<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

この7月1日に、今季初の一軍登録となった阪神3年目・伊藤隼太。ファームでは今季57試合出場、打率.283、6本塁打、30打点という成績。過去2年間一軍では不発が続くが、ドラ1の意地を見せられるか。

ファームの体質は、ドラフトの姿勢にも関連する。

 拙著『プロ野球 問題だらけの12球団』の今年度版ではロッテについてこんなことを書いた。

「高校卒はトーナメントの洗礼を高校時代に浴びただけで済んだのに対し、大学卒、社会人出身は最低それより3年多くトーナメント戦を経験する。それは指導者に忠実な選手を育て上げるのに十分な時間と言っていい(中略)スケールを殺してもチーム全体の力を結集して勝利を求めていく、というスタイルはある程度評価できるが、常勝を目標にするチームのものとしては物足りない。チーム全体の力で勝つスタイルに、個人技で勝つ野球を加えた森西武型こそ常勝チームにふさわしい。今のロッテでは2、3位になれても優勝は無理だと思う」

 ドラフトで高校卒を指名しない(少ない)戦略は、極端なことを言えばファームで人材を育てない戦略である。ファームでは強い、一軍もそこそこ強い、しかし天下を獲ろうとしない、それが何とももどかしい。

育成姿勢を批判されることが多い阪神を見てみると……。

 一方で、育成の姿勢を批判されることが多い阪神には、まだまだ問題が多いものの変化の兆しが見受けられる。

 6月25日、大阪にTVの用があったついでに阪神ファームの本拠地、鳴尾浜球場で行なわれたウエスタン・リーグ、阪神対オリックス戦を観戦した。その前日、24日のスターティングメンバーは次の通りである(30分遅れて球場に着いたため超満員の観客で埋まったシートに割り込むことができなかった)。

[阪神]               [オリックス]
(三)西岡剛        29歳  (中)駿太        21歳
(中)俊介        26歳   (二)三ツ俣大樹  22歳
(右)福留孝介     37歳  (左)バトラー     28歳
(一)新井良太     30歳  (一)高橋信二    35歳
(指)陽川尚将     22歳  (指)鉄平       31歳
(捕)鶴岡一成     37歳  (捕)伏見寅威    24歳
(二)黒瀬春樹     29歳  (三)山本和作    27歳
(左)一二三慎太 21歳  (右)小島脩平    27歳
(遊)北條史也    19歳  (遊)堤裕貴        20歳
(投)二神一人    27歳  (投)海田智行     26歳

 オリックスとの年齢的な開きは一目瞭然である。1~4番の西岡、俊介、福留、新井は一軍メンバーそのもので、本来ファームの試合に出なければならない梅野隆太郎(捕手・23歳)、西田直斗(内野手・21歳)、横田慎太郎(外野手・19歳)、伊藤隼太(外野手・25歳)、中谷将大(外野手・21歳)、緒方凌介(外野手・23歳)はここに名を連ねていない。

【次ページ】 翌日は一転、若手に出場機会を与えた阪神。

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