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9番起用の理由は「合う打順がない」?
巨人・長野久義に必要な“状況判断”。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/05/30 10:30

9番起用の理由は「合う打順がない」?巨人・長野久義に必要な“状況判断”。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

プロ2年目に首位打者、3年目には最多安打と輝きを放ったが、今季は不振が続く長野。日本一奪還を狙う原巨人の原動力となれるだろうか。

出塁が求められる場面で、初球を打って凡退。

 典型例が5月8日のDeNA戦(東京ドーム)の9回の打席だった。

 この日の長野は「3番・右翼」で先発して3打数無安打1死球。この打席は1点を追う最終回、2死二塁という状況だった。

 そこで長野は初球を打って遊ゴロに倒れた。

 もちろん打てると判断して好球必打でバットを振って、結果が凡退だった、という考えもある。ただ1点ビハインドの最終回である。

 ここでの役割は走者を還すということと同時に、最低でも次の打者につなぐということであるはずだ。

 一方、この状況で相手投手は早くアウトを取って試合を終えたいという心理でマウンドに立っているはずだった。ならば2ストライクとはいわないが、ストライク1つは我慢してでも、まずボールを投げさせて相手を心理的に追い込むこと。相手が慎重にコーナーを突こうとしてボールが増えれば、四球の確率も上がる。初球から打つ場合には、かなりゾーンを絞って、確実に捉えられる自信のある球だけをスイングする気持ちでなければならないはずだった。

原巨人が目指す“トータルベースボール”の性質。

 しかし、長野が手を出したのは、外角寄りのボール球だった。初球から手を出すべきボールだったのか? 結果論でなく、果たして正しい状況判断が出来た凡退だったのか? そこが問われる打撃だったわけである。

 松井氏が言うように、打者にとって一番大切なのは、打席で的確な状況判断をして、それに合わせた打撃ができるかどうかである。

 特に今の原巨人が目指すのは、打順によって仕事が決まるのではなく、どの打順でも状況によって役割が変わる“トータルベースボール”とでも呼ぶべき野球なのだ。そこでは4番打者でも送りバントをするし、進塁打を打つ。場合によっては安打を打つ欲を捨て、ファーストストライクを捨ててでも四球を奪う意識を持つ。そういうシチュエーション打撃を確実にすることがチームオーダーなのだ。それは局面によっては、安打を打つより価値があると評価されることなのである。

【次ページ】 高いアスリート能力を、「野球選手」の能力に。

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