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9番起用の理由は「合う打順がない」?
巨人・長野久義に必要な“状況判断”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/05/30 10:30
プロ2年目に首位打者、3年目には最多安打と輝きを放ったが、今季は不振が続く長野。日本一奪還を狙う原巨人の原動力となれるだろうか。
原監督が語った「合う打順がない」の意味。
ただ、この決断にスタンドはどよめいた。長野に代打が送られるという事実にファンは意外性を感じたということだが、勝つためにより高い確率を求めれば、当然の決断だったわけである。
この代打の前日の5月25日、日本ハム戦後の会見で、原監督はこんな言葉を口にしていた。
「長野の打順はどこが一番いいんだろうと試行錯誤しながら考えていますが、合う打順がないね」
原監督が「枢軸」と評してチームの中心選手と位置づける長野は、天才肌の打撃センスの持ち主で、本来の最適な打順は1番ないし3番というところである。今季は開幕を3番でスタート。ここまで全試合に先発出場しているが、打順に関しては2番と4番以外の全打順を経験する流浪生活を余儀なくされているのだ。
絶不調の阿部をも下回るOPS。
背景にあるのが、今季の不振だった。
5月27日現在で、打率2割6分4厘は打撃30傑の22位。しかもOPS(出塁率と長打率を足した数字で、打者の塁に出る能力と走者を還す能力を総合的に示す数字)は.690まで下がっている。これは巨人の主力選手の中でも最低で、長野より打率が低く絶不調と言われる阿部慎之助捕手もOPSは.785、村田修一内野手でも.708である。
1番に据えるには出塁率が3割2分2厘と低く、かといってクリーンアップに置くのも打率2割6分4厘、長打率3割6分8厘では期待度は上がらない。そうしてたどり着いた先が「9番」だった。
ただ、この「9番」という打順は、ただ単に打撃不振だけが原因ではないかもしれないのだ。原監督が長野をこの打順に置かざるを得なかった理由の一つには、その凡退の質があるからだった。