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ギリシャと堅守速攻の複雑な関係。
サッカーが爆竹と陽気さに包まれる国。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2014/06/02 10:40
オリンピック・スタジアムでは爆竹も発炎筒も日常茶飯事。今年4月にも発炎筒が投げ込まれ、煙が充満してピッチが見えなくなる「事件」も。
催涙ガスが打ち込まれ、中止になったアテネダービー。
ギリシャ代表の最多キャップ数を誇るカラグーニスのように、あんなのサッカーをやる雰囲気じゃないよ、とその過激さに辟易としている選手もいるが、若い選手の中には「やっぱり発煙筒と爆竹がなけりゃ盛り上がらないよ」と言うものもいる。
ちなみにここ数年、ギリシャではアウェーチームのサポーターは基本的に入場禁止となっており、両チームのサポーター同士が激突するアクシデントは減っている。
でもそれじゃあダービーの雰囲気が出ないだろ、そういう意見を汲んで、アテネダービーで数年ぶりに両チームのサポーターを入場させたところ、わずか15分でリードされたパナシナイコスのサポが大騒ぎを始め、催涙ガスが打ち込まれ、結局試合は中止になった、チャンチャン。
ギリシャカップの決勝は、さすがにアテネダービーのようには荒れなかったが、試合前の選手入場の際と、ゴール後の発煙筒&爆竹フィーバーはハンパなかった。
毎回ギリシャでサッカーの試合を撮ると、この観客席の騒ぎの印象が強すぎて、いまひとつ試合内容は記憶に残らないが、この試合はそれなりに見応えのある内容のものだった。
細かくパスを回しながら、果敢に攻め込むオリンピアコスと、効果的なカウンターを仕掛けながら応じるアトロミトス。ギリシャ人の持つ足技の巧みさも、屈強な身体も、そのふたつが見られた試合だった。
ギリシャ人が、堅守速攻を好きなわけじゃない。
ギリシャ代表は堅守速攻、ファランクスに例えられるが、僕自身が見たいくつかのギリシャのリーグ戦は、それほど全てのチームがガチガチに守って素早く攻める、という感じでもない。固く守って素早く攻めるサッカーをギリシャ人がそこまで好いているようにも見えない。ギリシャには小柄で足元の巧みな選手も大勢いるし、実際そういう選手がドリブルで切り込んだりトリッキーなプレーを見せると、スタンドはどっと沸く。
結局のところ、ギリシャ代表チームに堅守速攻のイメージがつきまとう理由は、強いチームは当然ボールを支配するし、弱いチームは固く守って好機をうかがい、ギリシャ代表が長らく後者の立場でヨーロッパサッカーの世界を生き延びてきたからなのだろう。