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ギリシャと堅守速攻の複雑な関係。
サッカーが爆竹と陽気さに包まれる国。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2014/06/02 10:40
オリンピック・スタジアムでは爆竹も発炎筒も日常茶飯事。今年4月にも発炎筒が投げ込まれ、煙が充満してピッチが見えなくなる「事件」も。
話し好きで、人懐っこく、見栄っ張りで、短気。
その2004年からさらに10年、僕には2度ギリシャを訪れる機会があった。通算で3度のギリシャ。どの旅でも、毎回ギリシャ人の印象は変わらない。
話し好きで、人懐っこく、見栄っ張りで、短気。
例えば、僕がアテネで宿泊していた安ホテルのフロントで働いていたディミトリウスという青年。
朝、僕がロビーに降りてゆくと、彼はまず大きな声で「Goood Morniiig、ミスタ!」と機嫌良く挨拶し、何か飲みますか? と訊いてくる。
僕は、じゃあフラッペを一杯、とリクエストする。彼は、OK!と親指を立て、バーカウンターの裏側にまわり、ミキサーにインスタントコーヒーと練乳と、水とアイスを入れ、スイッチを押し、出来上がった冷え冷えのフラッペを細長いグラスに注ぐとテーブルの上に置き、テーブルを挟んで僕の前に腰掛け、20分ほど世間話に集中する。
そして毎回、僕が勘定を頼むと、彼はすごく大げさに、Noooooo!と両の掌を天に向け、私のおごりですよ! と嬉しそうに胸を張る。
これが10日間、毎朝繰り返される。
そういうところが、僕はたまらなく好きである。
あるいは、シンタグマ広場の近くのレストランで、テーブルの上にカメラを置いて食事をしていると、ウェイトレスのお姉さんが「あんたカメラマン? 写真の撮り方教えてよ」と声をかけてくる。5分ほど構図の作り方を教えてあげると、彼女は僕の食事が終わった頃一杯のエスプレッソを持ってきて、これ私のおごり、とにこりと笑う。
僕は日本人風に、いいよいいよ、代金はちゃんと払うよ、と相手の好意を丁重にお断りする、あるいはするそぶりを見せる。これを2回やると、ギリシャ人は本気でむっとする。おれのおごりだと言ってるだろ!
ギリシャ人のそういうところが、僕はたまらなく好きである。