ブラジルW杯通信BACK NUMBER
ギリシャと堅守速攻の複雑な関係。
サッカーが爆竹と陽気さに包まれる国。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2014/06/02 10:40
オリンピック・スタジアムでは爆竹も発炎筒も日常茶飯事。今年4月にも発炎筒が投げ込まれ、煙が充満してピッチが見えなくなる「事件」も。
アトロミトスの奇抜な髪型のFW、ミトログル。
地元記者に聞いた話だと、現在ギリシャの代表監督をつとめるポルトガル人、フェルナンド・サントスは、前任のオットー・レーハーゲルと異なり、ポゼッション重視のサッカー、4-3-3の攻撃的な布陣にこだわっている。
とはいえ、ギリシャがヨーロッパの強国、格上と対戦するときは、どうしてもゲームの主導権は相手にわたってしまう。
そういうゲームになると、ギリシャは比較的高めのライン設定で守備をしながら、ボールを奪った瞬間にカウンターに入る。これがギリシャのスタイルというふうに定着しているようだが、ギリシャ人が好き好んでそのスタイルを貫いているようには思えない。
ギリシャカップ決勝はオリンピアコスがアトロミトス相手に2-1で勝利したが、負けたアトロミトスに一人、奇抜な髪型をした大型のFWがいた。大きいくせに足元は柔らかく、ポストをやらせても、ドリブルで仕掛けてもよかった。
彼の名前はミトログル。元々はオリンピアコス所属の選手で、このときはアトロミトスにレンタルされていたそうだが、その後彼はオリンピアコスに復帰し、2013年にはリーグ得点王、今回のW杯予選ではプレーオフの対ルーマニア戦で2得点1アシストの活躍で一躍ヒーローとなった。このミトログルともう一人長身のサマラス、そこにベテランとはいえスピードのあるサルピンギディス、ゲカスといった選手がギリシャ代表の攻撃には絡んでくる。
くみしやすし、よりそう思った方が勝ち点を失う。
くみしやすし。第二戦で対戦するギリシャをたくさんの人がそう評価している。僕自身も、今の日本が力を出し切れば、さほど恐れる必要はないと思う。
しかし一方で、下手に押し込んで調子に乗り過ぎると、日本代表は取り返し様のないほどの痛い思いをさせられることになるような気もする。ギリシャ人プレーヤーは決して下手ではないし、多くの人が言うほど俊敏性に欠けるわけでもない。
FIFAランキングはさほどあてになる数字ではないが、それでも彼らは14位で、我々は40位、その現実だけは頭の隅でしっかりと認識しておくべきだろう。レシフェでの第2戦は、くみしやすし、と思った方が勝ち点を失う、そんな気がする。
東京で長い時間を過ごしていると、ときどきギリシャ人のあの大げさな陽気さ、人なつっこさが無性に恋しくなるときがある。アテネに戻って、あの大きな話し声に包まれたくなる。もう一度戻りたい、僕にそう強く思わせてくれる街はそう多くない。
グループリーグは1位が日本、2位がギリシャ、あるいはその逆でも、そんな結果になってくれるのが僕の理想ではある。