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シャビ&イニエスタ。パスサッカーを
完成させる最強の頭脳。
posted2014/05/30 16:30
text by
松本宣昭Yoshiaki Matsumoto
photograph by
Getty Images
相手に厳しく体を寄せられても、何食わぬ顔でパスをつなぎ、ゴールマウスにボールを届ける。なぜ、シャビとイニエスタは僅かな時間とスペースの中で、あれだけ正確にパスをつなげられるのか。頭の中を覗いてみたい。
バルセロナやスペイン代表のパスサッカーを目にした人ならば、一度は感じたことのある願望に挑戦したテレビ番組がある。『NHKスペシャル ミラクルボディー』のチーフ・プロデューサーを務める中村直文氏は、彼らの脳に注目した理由をこう語る。
「バルサのカンテラ(下部組織)では、選手をスカウトするときに、サッカーにおける頭の良さを重視しています。その象徴がシャビとイニエスタです。彼らは決して体が大きくないのに、バルサに不可欠な存在となっている。脳科学の分野からアプローチすれば、“カンテラ脳”の秘密が分かると思ったんです」
シャビが「状況判断」で叩き出した圧倒的な数字。
番組では、ノーベル生理学・医学賞の選考にも関わるスウェーデン・カロリンスカ研究所のヴェストベルグ研究員に調査を依頼した。同氏を、まず驚かせたのがシャビの状況判断能力だ。この能力を調べるために、1枚の紙に書かれた1~16の数字をできるだけ素早く番号順に結ぶテストが行なわれた。スタートの合図とともに、シャビの右手がリズム良く動く。そのテンポはスペイン代表のパス回しのようだ。実験後、ヴェストベルグ氏はシャビにこう語りかけた。
「あなたの周囲の状況を把握するスピードは非常に速い。紙の上で数字や文字を見つける速さは、目を見張るものでした」
人間の脳内には、現在の行動によって将来の結果を予測し、その上で自分が取るべき行動を決める「実行機能」と呼ばれる働きがある。シャビはこの機能の中でも、「状況判断」の分野で圧倒的な数値を叩き出した。