スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
3年前のペップの予言が現実に?
不振のメッシに吹き始めた“逆風”。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/04/22 16:30
2004年にデビューを飾って10年、バルサとの関係は「蜜月」とも言えるものだったが。
チームメイトもメッシにボールを預けなくなった。
ピッチ内外であまりにも大きな影響力を持ちすぎたメッシを快く思わぬ執行部が、彼の売却を水面下で画策している。そんな噂も出てきている。昨夏よりパリ・サンジェルマンが繰り返しメッシに移籍話を持ちかけてくるのは、カタール企業という共通の資金源がバックについているバルサの同意を得ているからだという憶測があるのだ。
チーム内にも火種は存在している。本人の積極性の欠如だけでなく、チームメートの方が以前ほど彼にボールを集める意識がなくなってきていることも、メッシがプレーに関与する頻度が減っている一因となっているからだ。
この数試合、バルサの攻撃はイニエスタとネイマールが左サイドから仕掛けるドリブル突破を中心に回っており、右寄りに位置することが多いメッシは蚊帳の外にいるような印象を与えていた。それは攻撃が手詰まりとなるたび、「何とかしてくれ」と言わんばかりにメッシにボールを集めていた昨季までとは大きく異なる点だ。
以前もメッシが“消える”ことは度々あったが、そのほとんどは彼が組み立てに関与せずとも、チームメートがゴール前までボールを運んでくれるからだった。だがライバルたちの堅守を崩す術を見いだせぬまま、メッシも現れない、チームもメッシを頼らないのでは彼をピッチに置いておく意味がない。しかもそんな試合が続けば、次第に周囲は動かないメッシにパスを出さなくなり、パスをもらえないメッシはさらに動かなくなるという、悪循環にも陥りかねないだろう。
全ては、メッシが「飽き」てしまうかどうか次第。
2011年5月28日。マンチェスター・ユナイテッドに3-1で完勝したチャンピオンズリーグ決勝の直後、バルサ黄金時代の立役者ジョゼップ・グアルディオラが言っていた言葉がここに来て再び注目されている。
「メッシはこれまで見てきた中で最高の、二度と現れることのない選手だ。今はもう彼が飽きてしまわず、チームメートたちとうまくやってくれることを願うばかりだ。クラブは賢く振る舞い、彼を取り巻くのに適した選手を獲得しなければならない。もし何かがうまくいかなかった際、それは彼の周りで何かが機能していないことの表れだ」
バルトメウ会長は今夏、グアルディオラの忠告を忠実に実行すべく、メッシを中心に据えた抜本的なチーム改革を行なうことを明言している。
ただグアルディオラの言う通り、それが新たな黄金期の到来につながるかどうかは結局、メッシが飽きてしまわないことにかかっているのかもしれない。