プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「6番・阿部慎之助」も辞さず――。
原監督が“超実力主義”を貫く理由。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/04/04 10:50
開幕から5試合を終えた時点で4勝1敗と順調なスタートを切った原巨人。なかでもチーム打率が4割をマークするなど、打線の好調さが際立っている。
打線に絶対はないと思い知った日本シリーズ。
その裏には去年の苦い経験がある。
「打てなかったというのが最大の敗因」
こう分析したのは楽天との日本シリーズで敗れた直後のことだった。
楽天の絶対エース・田中将大投手を打ち込んで3勝3敗と逆王手をかけた第7戦。しかし、そこでシーズン6勝5敗の美馬学投手に6回までわずか1安打に抑え込まれ、最後は則本昂大、田中両投手を注ぎ込む楽天の継投の前に零封負けを喫した。
「シリーズを通してあの慎之助が2安打。打線というのはそういうことがある。絶対というのはないんだよ」
だからもう一度、これまでの評価や実績を捨て去って、最良のオーダーを探す。
そうして起こった一つの現象が「6番・阿部慎之助」だったわけである。
この思い切ったオーダー変更は「この先にはフェンスの外しかない」とまで追い込まれ、自ら最も逆境を経験した原監督だからこそ、できる策だともいえるかもしれない。
「慎之助の4番は、一番のオプションとしてある」
この起用には異論もあるかもしれない。
「6番起用は阿部のプライドを踏みにじることになるのではないか」
そういう意見もあるかもしれない。
ただ、巨人の主力選手というのはそういうプライドではなく、勝つために何ができるのか。そこに徹せられるかに価値がある。
「どんな状況になっても下を向かない。厳しい状況のときに、へらへらしているかもしれないけど、それで批判しないでください」
自覚があればこそ、開幕前にこう語ったのは阿部自身だった。チームリーダーとして、巨人の主力選手として、そして現役時代の原が持ち続けたプライドと同じものを持つものとして、決してこの起用に下を向くようなことはないということなのだ。
「もちろん様々な可能性をこれからも追求していくし、その中には慎之助の4番というのは、一番のオプションとしてある」
原監督は言う。
最善を探すための思い切った選手起用は、まだまだ続くことになる。