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<日本一奪還へのタクト> 原辰徳 「“土壇場の一勝”を掴みとる」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/04/07 11:50
昨季、日本一へあと1勝と迫りながら苦杯を嘗めた。
積極補強でV本命と目される常勝チームの指揮官は、
新たに始まるシーズンにどんなビジョンを描くのか。
積極補強でV本命と目される常勝チームの指揮官は、
新たに始まるシーズンにどんなビジョンを描くのか。
重い敗北というものがある。
昨年の日本シリーズ第7戦。第6戦で楽天の不敗エース、田中将大を打ち崩して逆王手をかけながら、巨人は最後の1勝をもぎ取ることができずに日本一連覇は夢と消えた。
もちろん日本一を逃したこの敗北の重さはある。ただ……それ以上に、原辰徳の心にずしりと重くのしかかっていることがある。ここ一番の大勝負。そういう局面に持ち込みながら、勝ち切れなかった。そのチームの現実が、頭から離れないのだ。
「巨人の野球っていうのは、継承してきているものが一杯ある。80年の球団の歴史があり、
私が実際に知る中でも川上(哲治)さんから、ずっと受け継いできた強さというものがあった。それこそが伝統だと思うんです」
ここ一番で必ず勝つのも、巨人の伝統の一つだったはずだ。
過去にはV9最後の年となった1973年の最終戦での阪神との一騎打ち。また長嶋茂雄監督が率いた1994年には、中日とプロ野球史上初の最終戦同率首位決戦、いわゆる「10・8決戦」があった。
そのいずれも、巨人は想像を超えるような集中力を発揮し、そして最後の勝ち名乗りをあげてきたのである。
だが、昨年のシリーズは田中を打ち砕き、そういう局面を作り出しながら、最後に敗れ去った。だから原は、この敗北を単に日本一を逃しただけではなく、巨人が「巨人である理由」を失う重い敗北につながる危険性があると考えるわけだ。