スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
初球がストライクなら、打ち取れる。
松井裕樹の初登板で見えた「課題」。
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/04/03 13:10
昨年のドラフトで5球団から1位指名を受けた松井裕樹のプロ初登板。オープン戦では好調を維持していたが、プロの洗礼を浴びた形になった。
楽天、いや日本球界の注目を集める高卒ルーキー、松井裕樹が4月2日のオリックス戦でデビューした。
結果は6回を投げて自責点3の黒星。アメリカ流に考えるなら、「クオリティ・スタート」ということになるが、高校時代のような三振をバッタバッタと積み上げていく小気味のいい投球とはいかなかった。
その原因は何か?
ADVERTISEMENT
問題は「ファースト・ストライク」にある。
28人の打者と対戦し、ファースト・ストライクを取れたのは、わずか12人に過ぎなかった。50%を切って、42.8%。
メジャーの超一流は、60%以上の割合を誇る。
メジャーリーグの超一流の投手、たとえば昨シーズンのアメリカン・リーグのサイ・ヤング賞投手であるマックス・シャーザーだと、60%以上のファースト・ストライクの割合を誇る。
メジャーに比べると、日本の投手の場合は慎重に1球目を投げる分、ファースト・ストライクの割合が減ってしまうが、デビュー戦の松井の数字は低すぎる。
しかも、ファースト・ストライクが入るか入らないかが、そのまま結果につながっていたのだ。
| 1回 | 初球 | 結果 |
| ヘルマン | ストライク | 左ヒット |
| 平野 | ストライク | 送りバント失敗 |
| 糸井 | ボール | 三振 |
| ペーニャ | ボール | 左タイムリーヒット |
| 谷 | ボール | 四球 |
| 高橋 | ストライク | 三振 |
| 2回 | ||
| ベタンコート | ボール | 投ゴロ |
| 安達 | ボール | 死球 |
| 伊藤 | ボール | 四球 |
| ヘルマン | ストライク | 三振 |
| 平野 | ストライク | 遊ゴロ |
| 3回 | ||
| 糸井 | ボール | 左ヒット |
| ペーニャ | ストライク | 二フライ |
| 谷 | ストライク | 三振 |
| 高橋 | ストライク | 中フライ |
| 4回 | ||
| ベタンコート | ストライク | 三ゴロ |
| 安達 | ストライク | 左フライ |
| 伊藤 | ストライク | 中フライ |
| 5回 | ||
| ヘルマン | ボール | 四球 |
| 平野 | ボール | 四球 |
| 糸井 | ボール | 左フライ |
| ペーニャ | ストライク | 三振 |
| 谷 | ストライク | 三振 |
| 6回 | ||
| 高橋 | ボール | 二ライナー |
| ベタンコート | ボール | 中ヒット |
| 安達 | ボール | 左タイムリー三塁打 |
| 伊藤 | ボール | スクイズ成功 |
| ヘルマン | ボール | 遊ゴロ |
ボールを投げた15人のうち、ヒット、あるいは四死球で出塁を許したのが9人。ちょうど6割の数字である。
反対に、ファースト・ストライクが入った13人の打者に対しては、初回のヘルマンをのぞく12人、つまり91%以上の割合で結果的にアウトに仕留めていた。
なんとも分かりやすい投球だったのだ。
