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“フォアボールのギリシャ神”降臨。
ユーキリスと楽天の「出塁率」補強。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/03/26 10:30
メジャーでは観客からも愛され、ユーキリスの活躍には、ブーイングならぬ「ユーイング」という「ユー!」と叫ぶ応援がなされていた。
楽天の決断を後押ししたジョーンズとマギーの成功。
3月、アメリカの取材中でも「ケビンは元気かい?」という質問を受けた。ユーキリスのケガの状態は誰もが心配するトピックだった。
では、なぜ楽天は健康面でのリスクを背負ってまでユーキリスを獲得したのか?
それは、アスレチックスと同じように「出塁率」である。
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昨季、楽天が日本一に輝いた理由のひとつに、アンドリュー・ジョーンズとケーシー・マギーのふたりの外国人選手の活躍があげられる。
2012年の楽天は、使用球が飛ばなかったという理由はあるにせよ、2ケタ本塁打の選手がおらず、得点力不足に泣いた。
そこで目を付けたのがアメリカでも出塁率の高かったジョーンズだった。彼の打率は年年下降気味だったが、それでも四球を選ぶ我慢強さがあり、比較的、出塁率が高かった。楽天はジョーンズのスタイルが「解決策」になると考えたのである。
オープン戦は苦戦、開幕後は適応力を発揮するか。
その発想は見事に成功した。実際、昨季のジョーンズの出塁率は3割9分1厘と驚異的な数字を残した。
また、ジョーンズの打席での傾向がマギーをはじめとした他の選手にも伝播し、楽天の得点力が飛躍的にアップした背景がある。
この流れを受け継いだ結果、浮上したのがユーキリスだったのだ。
ただし、オープン戦では打率が1割台と低迷し、やや不安は残る。
「オープン戦では、変化球の多い日本人投手の球筋を追うことを優先させてきた」
と話しており、開幕戦からはその適応力が試される。
もともと、メジャーでの彼のプレーを楽しんできた私としては、一日も早く、彼のプレーを日本の球場で見たいなあ……とウズウズしているのである。