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田中将大、好調の陰にWBCの屈辱?
侍ジャパンとメジャー球を巡る提案。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFLO
posted2014/03/21 11:00
オープン戦でも好投を続けている田中将大。その適応能力が既に高く評価されているが、その投球を支えているのが、「決め球」スプリットだ。
ニューヨーク・ヤンキースに移籍した田中将大投手が、開幕に向けて順調な調整を見せている。
もともと投手としての能力、ポテンシャルは非常に高いものがある。あとはどう環境に順応して、精神的にも安定した状態でマウンドに立てるか。ここまでの成功の一番の理由は、やはりボールとマウンドへの対応がうまくいっていることではないだろうか。
田中といえば、昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、日本のエースと期待されながら、結果的にはその期待に応えられずに苦い思いをした経験がある。その失敗の一番の理由は、やはりボールにあったはずなのである。
表面がツルツルで日本のボールに比べて滑るメジャー球では、スライダーが思うように制球できずに、自分の基本的な組み立てがまったくできなかった。その精神的な苛立ちから、投球がどんどんおかしな方向にいってしまったように映った。
サバシアに「反則」と言わしめた田中のスプリット。
ただ、である。
その中で田中がつかんだものもあったのだ。
それはスプリットなら、滑るメジャー球でもさほど影響を受けずにボールをコントロールでき、しかも日本のマウンドより角度のあるメジャーのマウンドでは、より落差が出てボールの威力が倍増するということだ。
昨年のWBCの大会中、スライダー中心からスプリット中心の組み立てに切り替えて、結果こそ十分には出せなかったが、手応えを得た。そうして田中は“未来”への道を切り開くことができたのだった。
そういう経験を踏み台にして臨んだ、今年のヤンキースのキャンプ。
「あのボールは反則だぜ!」
エースのCC・サバシア投手をしてこう言わしめた田中のスプリットは、メジャーリーグでも屈指の決め球と評価されるようになっているわけだ。