WBCの経験が、メジャー球への対応を促した。

　ここで思うのは、もし田中にこのWBCの経験がなかったら、これほど早くメジャーのボールとマウンドに対応できていただろうか、ということなのである。

　田中自身は非常に痛い目にあい、屈辱を味わった大会だったかもしれないが、やはり国際大会を経験したことが、田中を投手としては一回り成長させている。それはまぎれもない事実なのだ。

　常設化された侍ジャパンというのは、もちろん日本の野球人気を活性化させる、一つの大きなキーアイテムである。と同時に、選手にとっては世界と自分の距離を測っていくための絶好の機会だということも見逃せない要素となるだろう。

　今年のオフには、日本にMLB選抜チームを招聘して小久保裕紀監督率いる日本代表チームと強化試合を行なう計画が進行している。

強化試合で使うボールには一考の余地がある。

　そこで一つ思うのは、ボールの件だ。

　これまでも何度かこのコラムで指摘してきたが、せっかくこうした国際試合を開催しても、そのときに使用するボールがWBCで使用するボールでなければ、選手、特に投手にとっては、試合をやって経験を積む意味が半減してしまうということである。

　昨年の小久保ジャパンの船出となった台湾遠征でも、やはり使用球はミズノ社製の国際球だった。

　その点に関して小久保監督に聞くと「色々と事情もあるので……」と歯切れが悪いのは、やはり侍ジャパンのスポンサー・ミズノ社に対する配慮があるように感じられた。

「このチームの最終目標が2017年のWBC第4回大会にあるのだとしたら、やはり数少ないこういう機会にメジャーのボールを使うほうがいいに決まっている。そのことは今後の検討課題だと思う」

　あるチーム関係者ははっきりとこう語っていた。

　WBC本大会前なら、誰が考えてもそのときに使うボールを使って準備をするのは当たり前のはずだ。ならばこの秋にせっかくメジャーの選抜チームを招いて行なう試合では、ぜひともメジャー球で試合が出来るように、NPBとミズノでしっかりと検討していただきたいと思うのである。

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