スポーツで学ぶMBA講座BACK NUMBER
「強い」だけではファンは増えない!?
スポーツにおける「有意性」とは。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/01/31 10:40
日本のプロ野球界でも、昨今のサッカー人気を意識して各チームが経営改革を進めている。ファンの動向も含めて、新しい球団経営のあり方が模索されている。
昨年の2020年東京オリンピックの決定に続き、2014年はソチ冬季オリンピック、サッカーワールドカップブラジル大会などが開催されるスポーツイヤー。「スポーツ×経営学(マネジメント)」に関する注目度も高まっていることが感じられる。ここ最近、よく話題に上る論点。それは「日本のスポーツビジネスと他国のスポーツビジネスはなにが違うのか」ということである。
読者はなにが違うと感じているだろうか。
同じ競技であるにもかかわらず、その競技がビジネス化に成功している国もあれば、ビジネス化に苦しむ国もある。
例えば、「サッカー」を例にとると、サッカーのゲームルールは変わらないのに、ファンを集め収益を得ているリーグ・チームとそうでないところが存在するわけだが、このような状況が生じる分岐点はどこにあるのであろうか。
「優位性」と「有意性」の違いを知る。
その1つの要因は、スポーツというものを「魅せる」ということに対する取り組みの違いであろうように筆者は感じる。
以前、ビックカメラ社長の宮嶋宏幸氏がビジネス雑誌で「日本の企業は技術や品質の『優位性』は際立っているが、消費者に製品の持つ『有意性』を十分に伝えていないのではないか」と語っていた[*]。
「優位性と有意性」。
製品やサービスのクオリティを上げること(優位性の構築)は得意であるが、その製品、サービスを、「顧客にとって」意味があるように魅せることが得意でないという。
スポーツに置き換えると、その勝敗に関わるチームの強さを磨き続けることが「優位性」であり、これは重要。しかしこれだけでは不十分であり、そのスポーツに関わる意義や楽しさ、その場に参加することの意味となど、その人がスポーツにどのような意味づけをするかという「有意性」を創造し、世の中に届けていくことが必要になる。