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パ・リーグはなぜ観客が増えたのか?
顧客を魅了するイメージ戦略を考える。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/03/05 10:40
昨年のパ・リーグにおける千葉ロッテvs.東北楽天のクライマックス・シリーズ。立錐の余地も無いほどの観客がスタンドを埋め尽くした。
顧客の興味に訴えるイメージを創造せよ。
この人たちが、購入している製品・サービスは、実は試合の結果そのものではなく、その空間である。スタジアムの改修などでターゲット顧客が価値を見出す空間を「物理的に」創りだしただけではない(つまり製品の質を上げただけではない)。
例えばレディースデイや「ビューティーチケット」「婚活シート」のキャンペーン活動などを通して、ターゲット顧客の頭の中に、例えば「オープン」「新しい」「もはやおじさんのものだけではない!」というようなイメージを創りだし、新しい顧客層が「これ面白そう! 行ってみよう!」と思うような価値あるイメージ、つまり有意性のあるイメージを創りだすことに成功したからこそ、新しい層をはじめとする多くの人に支持されたのである。
このように、ビジネスにおけるパーセプションの役割は非常に大きいのだ。
「質の良い睡眠」以外を切り捨てたホテル。
次は企業の事例をみてみよう。
「remm」という睡眠をテーマにしたビジネスホテルが好例であろう。
よい質の睡眠をとれる=レム、というパーセプションを見事に創りだしている。ではそのイメージをどのように創りだしているか。
「remm」のキャッチコピーは「眠りをデザインするホテル」。実際に、このような広告も出している。それだけではない。部屋の広さの割に大きな、寝心地の良いオリジナルベッドがドカンと置いてあり、よい睡眠が得られるような寝具と環境が完璧に揃っている。そして、逆にその他のサービスは最小限に抑える。チェックインもほぼ自動化、通常はバスタブさえも部屋にない。書斎机もない(ちょっとしたテーブルはある)。ドレッサーもない。つまり、質の良い睡眠を創りだすもの以外は、徹底的にカットされている。
「“(限られた時間でも)質の良い睡眠”以外を宿泊施設に望むのであれば、ここはもしかすると最適な場所ではないかもしれません」と言っているかのようである。ここに戦略の強さがある。