日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
イタリアのメディアは世界一苛烈?
本田に必要なのは、長友の“図太さ”?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2014/01/25 08:20
チームの中で確固たるポジションを獲得し、自信に満ちたプレーを見せる長友佑都。キャプテンマークを経験するなど、インテル4季目の男は着実にステップを上っている。
「純粋すぎたらやっていけない。多少のクセはないと」
彼はこうも言っていた。
「サンシーロで戦っている選手というのは、サポーター、メディアとかのプレッシャーも強くて、それでつぶれていく選手だっている。長くここでプレーすることがどれだけ難しいかは、いる人じゃないと分からない。ここで常に安定してプレーできている人は、やっぱりメンタルが違う。図太いですよ。極端に言えば、ミスしても俺は関係ねえよって言えるぐらいのメンタル。純粋すぎたらやっていけない。多少のクセは持っておかないといけないんです」
“インテリスタ”“ミラニスタ”との言葉があるように、ビッグクラブになるとイタリア人のファン、サポーターの過熱度もより高くなる。
長友は試合に負けた翌日、熱心なサポーターに道で呼び止められて「お前より俺がプレーしたほうがいいんじゃないか」などと言われたこともあったとか。「その(出た)お腹でプレーできるんだったら、見せてよ」などとユーモラスに対応することもあれば、ガチに批判してくる相手には「わかった、わかった。だから今から練習に行くんだよ」などと切り返したこともあったという。
同い年の友人、ライバルである本田と長友の切磋琢磨。
正直、一つひとつ正面から真面目に受け止めていたらたまらない。タフであり、図太いメンタルがなければ生き残れない世界だというのにも納得がいく。
さて、本田はどうだろうか。
勝負強く、強靭なメンタルを持っていることは、長友との共通点でもある。長友が乗り越えてきた試練を、本田ならきっと乗り越えられるとは思う。
それに長友とは同じ年齢であり、良き友人、ポジションこそ違えど良きライバルでもある。非エリートであることも共通している。
ともにセリエAのビッグクラブで、それもライバルクラブでプレーするというのも、何だか運命めいたものを感じないではいられない。
切磋琢磨――。
本田の存在が長友をまたやる気にさせ、長友の存在が本田をまたやる気にさせる。
イタリアのメディアが、サポーターがいかに苛烈であろうとも、己以外で一番厳しく見ているのは、誰あろう、良き友であり、良きライバルの存在なのかもしれない。