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低迷ミランを変える「ホンダ・レッスン」。
3戦目で早くも見せた“上から目線”。  

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT

posted2014/01/21 11:20

低迷ミランを変える「ホンダ・レッスン」。3戦目で早くも見せた“上から目線”。 <Number Web> photograph by Enrico Calderoni/AFLO SPORT

試合中も、チームメイトに何度となく指示を出す本田圭佑。その様は、新加入選手というよりは、まるで最古参のリーダーのようだ。

「長い間ボールを保持することが、チームに足りない」

 その約3分間のフラッシュインタビューにおいて、本田はこう語った。

「長い間ボールを保持できるということがチームに足りないことだと思っているので、それを自分が率先してやりながら、なおかつその中で得点を目指していけたらなと思っています」

 公式戦である以上、勝利が重要なことは言うまでもない。本田の第一声も「チームが勝てたのは本当に良かった」だった。

 しかし、本田はACミランの入団会見の場を「イングリッシュ・レッスン」として利用した剛胆さの持ち主である。ベローナ戦を、チームメイトたちに戦術を示すための「タクティカル・レッスン」と考えていても、少しも不思議ではない。

自己アピールを越え、サッカー観の提案へ。

 通常、新加入の選手は自分の存在をアピールするために、強引にシュートを打ったり、難しいパスを狙ったりして、「オレはこんなにすごいぞ」というプレーにトライするものだ。それが名刺代わりであり、自己紹介でもある。

 ところが、本田は3試合目にして、もう次のプロセスに進んでいいと判断したらしい。ベローナ戦で実践したのは、「みんな、こうやろうぜ」という提案型のプレーだった。

 セードルフ新監督は、相手を敵陣に押し込む支配的サッカーを目指している。おそらくバルセロナやバイエルンに似た方向性のサッカーだと思われる。

 そのためには、アッレグリ監督時代のような、判断が遅く、スローペースのパスまわしではダメだ。1タッチのダイレクトプレーを効果的に織り交ぜて、プレーをスピードアップさせる必要がある。

 ベローナ戦において、本田はまさにそのお手本のようなプレーを続けた。派手なプレーではないため、メディアの採点ではプラスにならない。短期的な称賛を浴びたいなら、もっと別のやり方があったはずだ。だが長期的に考えれば、全体を正しい方向に導くという意味で、価値あるプレーだった。

 自分がどうこうという次元から一歩踏み出し、早くもチームをどう導くかという俯瞰的な視点に立っている。いい意味での“上から目線”のプレーだ。

【次ページ】 本田が、バロテッリやカカを変えていく。

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