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FA選手の動向と宿敵への移籍。
~ヤンキースが狙う「夢よもう一度」~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2013/12/14 08:01

FA選手の動向と宿敵への移籍。~ヤンキースが狙う「夢よもう一度」~<Number Web> photograph by Getty Images

今季、レッドソックスの世界一に大きく貢献したエルズベリー。盗塁王を3度獲得したリードオフマンだ。

「バンビーノの呪い」は今も生きているか。

 ま、イチローの去就については少し様子を見ることにしよう。もうひとつ私が興味を持っているのは、レッドソックス→ヤンキースという宿敵間の移籍にからむ数々の因縁だ。

 もちろん、すべてはベーブ・ルースにはじまる。ルースは1914年から'19年までレッドソックスに在籍し、'20年から'34年までヤンキースの主砲として神話を作り上げた。投手としても打者としても非凡だったルースは、レッドソックス時代にワールドシリーズを3度制覇し、ヤンキース時代には4個のチャンピオンリングを獲得した。ただし、彼を売却したレッドソックスは、1919年から2003年までの85年間、シリーズ制覇から遠ざかった。世にいう「バンビーノの呪い」である。

 呪いを裏づけた選手はかなり多い。救援投手として活躍したスパーキー・ライルは、1967年から'71年までレッドソックスに在籍し、'72年から'78年までヤンキースで働いた。彼のハイライトは'77年。この年、彼は13勝5敗、26セーヴの成績でサイ・ヤング賞に輝き、余勢を駆ってシリーズも制覇している。

 ロジャー・クレメンスやウェイド・ボッグスも、レッドソックスではシリーズ制覇を逃し、ヤンキース時代に初めて勝利の美酒を味わうことのできた選手だ。

 クレメンスは、'84年から'96年までがレッドソックスで、'99年から'03年までが1度目のヤンキース在籍だった。彼は'86年のシリーズで球史に残る敗北を喫し、'99年、'00年の2度にわたって、ヤンキースでシリーズ制覇を達成した。ボッグスのケースも似ている。レッドソックス在籍が'82年から'92年まで。ヤンキース在籍は'93年から'97年まで。シリーズ制覇は'96年だけだが、このときはニューヨーク市警の馬にまたがってフィールドを周回し、ボストン市民を憤然とさせた。

ヤンキース首脳は、何を思いエルズベリーを獲ったのか。

 エルズベリーの場合は、もちろん彼らと条件が異なる。彼は、'07年と'13年にレッドソックスでシリーズ制覇を達成した。もし彼が、ヤンキースでもシリーズ制覇を経験したら、最近ではジョニー・デイモンと似たケースになる。デイモン('02年~'05年=レッドソックス、'06年~'09年=ヤンキース)は、'04年にレッドソックスで、'09年にヤンキースでシリーズ制覇を果たした稀有な選手だ。ヤンキースの球団首脳は、「夢よもう一度」と考えてエルズベリーを獲ったのだろうか。デイモンがヤンキースに来たのは32歳のときだった。エルズベリーは、まだ30歳だ。ニューヨークのファンは、たぶん期待に胸をふくらませていることだろう。ただ、夢の実現に近づくには、高齢の投手陣をもう少し若返らせる必要があると思うのだが。

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