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<箱根駅伝・第90回大会展望> 駒澤大学3冠なるか。鍵を握る「区間配置」。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byShunsuke Mizukami
posted2013/12/09 06:01
1区トップが東洋大なら白熱したレース展開に。
実は前回、東洋大は「先行逃げ切り」を図り、途中までは成功している。1区田口が区間賞、それを設楽啓、設楽悠とつなぎ、2位の駒大に2分41秒の大差をつけた。しかし、4区で後続に差を詰められ、箱根山中で逆転を許して貯金が消えた。
1区で駒大をリードし、主導権を握ってしまう――。そんなプランが立てられるのは東洋大だけだが、酒井監督が1区から3区までは前回と同じオーダーを組むこともあり得るし、服部勇馬を2区、あるいは3区に投入するケースも考えられる。1区で田口を起用できるメドがつけば楽だろうが、果たして誰が走るのか。東洋大の1区。これが12月29日の区間エントリー最大の注目点だ。
もしも東洋大が1区で先頭に立つようだと、駒大、東洋大に心理的な影響も出てくるし、俄然、レースは白熱したものとなるだろう。
「イチかバチか」を狙う早大は2区・大迫に託す。
そしてこの2校から離れて、前回王者の日体大、全日本3位の明大、エース大迫傑を擁する早大が上位争いに加わってくるだろう。
特に明大は、1区の経験が豊富な文元慧の存在が大きい。トップは奪えないにしても、先頭とは1分以内でつなぐ力を持つ。そして2区で起用される見込みの大六野秀畝がその流れに乗れれば、不気味な存在になり得る。明大は区間配置に意外性はないが、特に復路での手堅いつなぎが特徴的だ。
そして、「1区の成功」という条件付きで面白いのが早大だ。早大が興味深いのは、どんなメンバーであっても絶対に優勝を狙って「イチかバチか」の布陣を組んでくることである。前回も渡辺監督は「往路で駒は使い果たしました」と潔い采配ぶり。今回も序盤に主力を惜しみなく投入してくるはずだ。
特に、世界選手権代表の大迫にとっては、最後の箱根駅伝となる。これまで大迫は1区、1区、3区と起用されてきたが、今回は「花の2区」での登場が期待される。早大が1区での遅れを考慮したとすると、どうしても2区で大迫の力が必要になってくるからだ。
実際、出雲、全日本での大迫の役割は「上位戦線への復帰」となってしまった。箱根駅伝ではうれしい誤算が生じ、1区の走者がトップと30秒差から1分の範囲内でまとめられれば、大迫の役割は戦線への復帰から優勝争いへと一気に格上げされる。