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“5000万ポンドの男”本格復活?
トーレスを蘇生させるモウリーニョ。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2013/11/05 10:30
第6節アウェイでのトッテナム戦で退場処分を受けたトーレスに囁きかけるモウリーニョ。
トーレスを最前線中央に固定することの意味。
また1度目のチェルシー監督時代もそうであったように、センターFWには中央での仕事を求める指導も、トーレスにはプラスに働いている。以前は、相手CBに張り付かれると、すぐにアウトサイドにスペースを求めてしまい、いるべき時にゴール前にいないというパターンも多かった。マンC戦でのシュートミスも、トーレスがゴール前の浮き球に反応できる位置にいたこと自体は、意識の変化を示す証拠として前向きにも解釈できる。
戦術面でも、モウリーニョは攻撃姿勢の強化に取り組みながらも、シャルケ戦でも奏功したように、勝利を実現する策の1つとして、トーレスが得意とするカウンターを「有り」とする姿勢を貫いている。
ゴールを狙う積極策として前線にFWを加える際にも、アウトサイドでも機能するサミュエル・エトーを獲得したことにより、昨季までのようにトーレスが2列目に回る必要はない。マンC戦の終盤も、エトーが左サイドに投入され、トーレスは本職のセンターFWのまま、勝越し点を狙える立場にあった。
ピッチ上での成否を、「9割はメンタル次第」と表現したのはドログバだが、その先代エースと同様に、トーレスは、モウリーニョの下で「チェルシー1トップ」としての自信を膨らませつつある。
世の中には、調教師がさじを投げた心の壊れた馬を蘇生させる「ホース・ウィスパラー」なる専門家が実在するが、モウリーニョは、差し詰め“トーレス・ウィスパラー”。移籍以来、4名の監督がなし得なかったトーレス復活の信憑性を自問しながら帰宅したファンも、その多くが「YES」と答えを出しはじめているに違いない。