詳説日本野球研究BACK NUMBER
対巨人“戦意喪失”を克服した広島。
真っ向勝負の志を生んだキラ効果。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/10/29 10:30
CSでは敗れたものの、レギュラーシーズンでは3勝0敗と巨人への抵抗の先鋒となった前田健太。
7月以降、対巨人戦の先発が変わった。
これは志の問題である。「♪ぼろは着ててもこころの錦」という水前寺清子の歌がある(いっぽんどっこの唄)。しかし、このときの広島には「貧すれば鈍する」という言葉のほうが似合っている。
6月30日現在の通算成績は29勝39敗1分け、勝率.426でリーグ4位。DeNAがわずか6厘差(0.5ゲーム差)で肉薄しているというありさまである。まさか9月以降、16勝9敗1分け、勝率.640でフィニッシュし、'97年以来16年ぶりのAクラスに入るとはこのとき誰も思わなかったに違いない。まして、クライマックスシリーズで2位阪神に連勝し、強い巨人とファイナルステージの舞台で日本シリーズをかけた戦いを演じようとは……。
広島の快進撃にはいろいろな理由があるが、私は苦手にしている強い巨人相手に正々堂々と前田健太、野村祐輔、バリントン、大竹寛の4本柱をぶつけて7月以降、善戦した(勝ち越し)自信、それがAクラス躍進の原動力になったと思う。前半と後半の先発ローテーションの顔ぶれを比較してみよう。
◇3~6月までの巨人戦12試合の先発 ◇7~9月までの巨人戦12試合の先発
バリントン 3試合 バリントン 3試合
久本祐一 3試合 前田健太 3試合
中崎翔太 3試合 大竹寛 2試合
野村祐輔 1試合 野村祐輔 1試合
中村恭平 1試合 中崎翔太 1試合
前田健太 1試合 中村恭平 1試合
久本祐一 1試合
明らかに顔ぶれが変った。ちなみに、6月30日現在のチーム打率.238は12球団ワースト1位(11位はヤクルトの.240)、チーム本塁打39も西武と並んで12球団最低である。投手成績は防御率3.48がリーグ3位(12球団中7位)と悪くないので、ここまでチームが低迷した多くの責任は攻撃面にあることがわかる。
6月まで巨人と12試合戦って挙げた得点はわずか25。1試合平均2点ちょっとである。チーム打率、防御率ともリーグトップの巨人にまともに戦っても勝てるわけがないので、エース級はまだ勝てる可能性のある他球団に、と最初に書いた心理状態がリアルに伝わってくる。