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天皇賞・秋、トウケイヘイローと武豊は
サイレンススズカの夢を見るか?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byEiichi Yamane/AFLO
posted2013/10/26 08:02
鳴尾記念、函館記念、札幌記念と2000mの重賞を3連勝中のトウケイヘイロー。1987年のニッポーテイオー以来となる秋の天皇賞での逃げ切り勝ちを決めることができるだろうか。
連覇を狙う“あの馬”は昨年以上に順調。
前述したように実質的には道悪だった宝塚記念で2着に来たダノンバラード(牡5歳、父ディープインパクト、栗東・池江泰寿厩舎)も、馬場悪化を苦にしないタイプだ。
3年前のラジオNIKKEI杯2歳ステークスでディープ産駒による重賞初制覇をなし遂げ、早くから注目されていた素質馬だけに、ここで一発あっても驚かない。
連覇を狙うエイシンフラッシュ(牡6歳、父キングズベスト、栗東・藤原英昭厩舎)は、良馬場でこそ瞬発力が生きるタイプだが、昨年以上に臨戦過程は順調だ。
昨年このレースに勝った直後、鞍上のミルコ・デムーロがスタンド前で下馬して跪き、天皇・皇后両陛下に最敬礼したシーンは印象深い。デムーロは、先ごろ発表された来年度のJRA騎手免許1次試験で不合格となったが、この天皇賞・秋でJRA・GI10勝目を狙う。母国・イタリアの競馬は財政難のためダービーがGIではなくなるなど苦境にある。それだけに、もともと親日家だった彼の日本競馬に寄せる思いは真剣だ。馬という生き物は、人間のそうした思いに何らかの形で応えることがよくあるので、2002、'03年のシンボリクリスエス以来の連覇も十分考えられる。
天皇賞・秋で伏兵が台頭する理由とは?
コース幅が広く、直線が長いため、力どおりに決着することの多い東京コースのGIでありながら、天皇賞・秋では、あっと驚く伏兵の台頭がときおり見られる。
それはなぜか。マイルか1800mぐらいがベストの馬と、2400mぐらいが適距離の馬がここで初めて顔を合わせると、10回やれば10回とも変わってきそうなほど、流れが速くなったり遅くなったりする。道中超スローペースになり、最後は究極の瞬発力勝負になった'05年は14番人気の牝馬ヘヴンリーロマンスが突き抜けた。逆に、トウカイテイオーらの有力馬がハイペースを追いかけて失速した1992年は、11番人気のレッツゴーターキンが差し切った。
適距離がバラバラな馬が集まると、力の比較が難しくなるうえに、極端なペースになってしまうことも多いため、過去の実績面からは評価が低くなった馬の大駆けが見られるようになるのだろう。
また、スタートしてすぐ最初のコーナーがあり、内枠と外枠との有利不利の差が大きいことも波乱を生む要因になっている。前記のヘヴンリーロマンスとレッツゴーターキンはともに1枠からの発走だった。