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ワールドシリーズ、戦力を徹底比較。
上原浩治の右腕に世界一がかかる!
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byAP/AFLO
posted2013/10/23 11:30

ワールドシリーズに臨むにあたり「ここまできたら特別なことを考えるのではなく、やるしかない。気持ちで負けることなく、やっていきたい」とコメントした上原。
上原、田澤、ブレスロウとズラリ揃ったリリーフ陣。
劣勢でも、試合をひっくり返す能力が打線にある。
打線のリズムを作っているのがブルペンであることも見逃せない。
上原浩治を筆頭に、田澤純一、左腕のブレスロウとコントロールがいい投手が揃っている。ポン、ポン、ポンと抑え、攻撃につなげているのも見逃してはならない。
カージナルスの強さの秘密は「育成力」。
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カージナルスといえば、かつて田口壮がプレーしていたという印象が強いファンも多いだろう。
このチームの強さは「育成力」にある。
アマチュアの選手を発掘する眼力、そしてマイナーでカージナルス流の野球を徹底的に叩き込む。
ドラフトで指名された選手たちには「教則本」が渡され、その内容はといえば、たとえば「内野ゴロには12種類ある」と明示され、さばき方も教則本に書いてあるという。驚きだ。
このシステムで育った代表格は、捕手のヤディアー・モリーナだが、若手でも第2戦に先発予定のワカは昨年ドラフトされたばかりの22歳、クローザーのローゼンタールも23歳と、才能ある若手がリーグ優勝に貢献している。組織力が若い選手を支え、それが勝利につながっているのだ。しっかりと仕込まれた野球は、大崩れしない強さがある。
ただしその分、野性味に欠けるきらいが昔からあって(私がメジャーをテレビで見始めた1970年代からそうなのだ)、2004年のワールドシリーズでは、ヤンキースを下して勢いに乗るレッドソックスに、なんと4連敗を喫している。
真面目な野球が、どちらに転ぶか――。
それが注目点だ。
爆発力のレッドソックスと、堅実なカージナルス。
爆発力のあるレッドソックスと、地味ながら堅実な野球を見せるカージナルス。
本当に対照的なチームの対戦だけに、野球のあらゆる醍醐味が満喫できそうな予感がしている。
しかし数字だけを見ると、類似している部分もある。
レッドソックスは得点、出塁率がメジャートップと書いたが、カージナルスは両部門で3位の数字を残しているのだ。両軍とも端的にいって、強い。
ただし、私が勝負の分かれ目と見ているのは、クローザーの「経験値」だ。