リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
真似る対象は、バルサからマドリーへ。
好調ビジャレアルを支える戦術と新星。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2013/10/17 10:31
ビジャレアルは2005-2006シーズンにCLベスト4入りを果たし、「イエロー・サブマリン」旋風を巻き起こした。前列中央が筆者注目のトリゲロス。
開幕からおよそ2カ月が経ち、今シーズン前半戦の趨勢が定まってきた。
首位を争うのはバルサとアトレティコで、マドリーは新しいプレイスタイルに四苦八苦しながらも幸運に助けられて3位。順当な展開といえる。
しかし、その下にビジャレアルがいるのは意外だった。
というのも、ビジャレアルは役員の1人いわく昨年2部で「全てを洗い流し、ゼロから再出発」したチーム。大幅な収入減に対応すべく市場価値と年俸の高いロッシやニウマール、ボルハ・バレロ、ディエゴ・ロペスら2年前の主力のほとんどを売却し、この夏もセナやハビ・ベンタ、オリオルらを放出した。若手を軸に作り直したため、経験値も低い。優れた選手はたくさんいるが23人中11人がカンテラ出身で、30歳以上はたったの3人しかいない。
それが、この段階になっても、2強やリーガでいま最も完成度が高いアトレティコに続いて4位に張り付いているなんて、いったい誰が予想しただろう。
パスサッカーを捨て、まっすぐゴールへ。
もっとも兆しはあった。第4節のマドリー戦だ。ベイルのリーガデビューで耳目を集めたこの試合、2-2の引き分けで終わったものの、意図通りのサッカーをして試合の流れを握り、強さを感じさせたのはビジャレアルの方だった(逆に、この一戦の内容と結果が若いチームを調子に乗らせたのかもしれない)。
ただ、数年前のビジャレアルのイメージを持った人が今季のサッカーを見ると違和感を抱くに違いない。ビジャレアルといえば数年前までバルサと並ぶパスサッカーの雄だったが、いまはパスを繋ぐことに執着せず、まっすぐゴールを目指すからだ。
監督マルセリーノは自分の信念をこう語っている。
「パス5本で敵ゴール前まで行けるなら、10本繋ぐより良い。大事なのはゴールチャンスをできるだけ増やすこと。チャンスが多ければ多いほど、得点する可能性も増える」
また現チームはディフェンスラインを非常に高くし、敵のボールホルダーに厳しいプレッシャーをかける。なぜなら監督が「ボールは常に我々が蹴り込む側のゴール近くにあってほしい。守る側にはあまり来てもらいたくない」と考えているからだ。
くだんのマドリー戦では、特に前半、アキーノとドスサントスがイスコを抑え、カニがモドリッチを見張り、ピボーテがボールを奪っては速いカウンターを仕掛ける場面が何度か見られた。攻守の切り替えの速さは必殺の武器になっていた。