野球善哉BACK NUMBER
3年ぶりにCS進出の阪神に奇策あり。
巨人を見据え、広島といかに戦うか。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/10 12:00
シーズンを戦ってきた正攻法で巨人に挑むか、短期決戦に奇襲を練るか。広島との戦いで、和田阪神の方向性が見えるはずだ。
オーダー変更も全ては「巨人に勝つために」。
しかし、9月以降の阪神の戦績が芳しくない。
6勝16敗2分けで、9月の成績はセ・リーグで断トツの最下位。CSの第1ステージで戦う広島が9月好調だっただけに、阪神の第1ステージ敗退を予想する評論家も少なくない。
ただ、その戦いの中にあって、阪神・和田豊監督がみせた奇抜な采配に「打倒・巨人」へのちょっとした期待を抱かせた。
それは、世間でも多く取りざたされた「鳥谷の4番起用」である。
いやもっといえば、鳥谷の4番起用時に象徴される、和田監督の思い切った打順変更だった。
和田監督が大幅にオーダーを変えたのは、8月27日~29日の巨人戦で3連敗した後である。
この3連戦は、阪神にとって勝負のカードとして位置づけた戦いだったが、完膚なきまでにやられた。つまり、和田監督は、同じ野球では巨人に勝ち目はないと踏んだのだろう。
この次のカード・広島戦からは鳥谷を4番に据えた。さらに、続いてのカードのDeNAとの3連戦では1番に上本博紀を起用。
西岡の離脱もあって、9月6日からの巨人との3連戦では、西岡・鳥谷・マートンでクリーンアップを組み、1番上本、2番に俊介という、これまでには見られなかったオーダーを組んだのである。
このオーダーが意味するものはなにか。
和田監督の個性が生きる、スピード勝負の打線。
それは、若さとスピードである。
スピードのある4人を並べることで、巨人と対抗する。
巨人ほどに本塁打が期待できないのなら、スピード勝負に持ち込む。俊足好打者だった和田監督の現役時代のプレースタイルから考えれば、監督自身の想いが垣間みえた采配だった。
和田監督には、オーダーを考える上で3つのパターンがあるという。
一つに、理想的な打線、一つに、点を取る打線、最後に相手が嫌がる打線――である。
「点を取る打線」は開幕から敷いてきた。
1番・西岡、3番・鳥谷、4番・新井良太、5番・マートン、6番・福留孝介、7番・新井貴浩。諸々の変更はあったが、昨年より復調の気配があった新井貴などシーズンの中盤までは、機能していたと言ってよかった。特に、巨人を除く他球団との戦いでは、「点を取る打線」で最大貯金17も積み上げられていたのである。