野球善哉BACK NUMBER
3年ぶりにCS進出の阪神に奇策あり。
巨人を見据え、広島といかに戦うか。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/10 12:00
シーズンを戦ってきた正攻法で巨人に挑むか、短期決戦に奇襲を練るか。広島との戦いで、和田阪神の方向性が見えるはずだ。
巨人に太刀打ちできなかった「点を取る打線」。
しかし、先の巨人戦での3連敗は、投手陣が崩れたこともあったが、「点を取る打線」では巨人に太刀打ちできないということを如実に表したようなものだった。
だから和田監督は、あの時点で「相手が嫌がる打線」を試したかったのではないだろうか。
実際、9月6日からの巨人戦3連戦では、1勝2敗ながら、打線は機能していた。
初戦では、1番・上本の出塁から3番・西岡の犠牲フライで1点を先制。8点を奪って勝利した。上本は2安打3得点、4安打5打点の4番・鳥谷らクリーンアップで7安打7打点を叩きだした。
スピードを軸に据えた打線が、結果を残したのだった。翌日は杉内の好投に、1得点に終わったが、3戦目は敗戦したものの、最終回に5点を取っている。
しかし、その勢いは長くは続かなかった。
順位決定後の試合で、上本を再起用した理由。
9月に負けが込んでしまったことがあるだろう。和田監督は、上本を9月11日からスタメンを外し、さらに10月に入って、「4番・鳥谷」を諦めて、通常のオーダーに戻したのだった。
その後は、確かに成績を上げた。2位を死守できたのは、打順を元に戻したからにほかならない。
だが和田監督は、シーズン2位が決まり、西岡を休ませた10月4日のヤクルト戦で、1番に上本を起用した。まだ上本の存在に価値を見出していたのである。
そして上本は、3安打で4出塁という形で、起用に応えた。なかでも圧巻だったのは、5回表、上本が二塁打を放ったかと思うと、すかさず三盗を試みたことだ。結果はアウトになったが、和田監督が上本を使いたがる理由の一端が見えたシーンだった。上本は盗塁に怯まない。常に積極的なのである。
上本は上背が小さく、寡黙でおとなしそうに見えるタイプだ。だが、その風貌とは裏腹に、野球勘が鋭く、積極的で勝負強い選手である。
高校2年時に広陵高で全国制覇を経験。早大では1年から4年間、一度も試合を外れることなく、フルイニングで出場した。小さい体ながら、アマチュアの最高峰でトップとして君臨してきた上本には、その経験からの勝負根性が備わっている。