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3年ぶりにCS進出の阪神に奇策あり。
巨人を見据え、広島といかに戦うか。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/10/10 12:00
シーズンを戦ってきた正攻法で巨人に挑むか、短期決戦に奇襲を練るか。広島との戦いで、和田阪神の方向性が見えるはずだ。
セ・パの順位が確定した。
12日からは、日本一を目指したポストシーズンが開幕する。
ワイルドカードを除けば地区優勝チームばかりが集結するMLBのポストシーズンとは異なり、日本型のポストシーズンは優勝を逃したチームの再挑戦の舞台といえる。セ・リーグ3位の広島は借金を抱えたままの参戦だし、パ・リーグ3位のロッテは首位の楽天に敵地で大きく負け越して(Kスタ宮城では2勝10敗)クライマックスシリーズ(以下CS)に挑む。いわば、日本のポストシーズンは敗者復活戦のようなものだ。
ペナントレースの成績には蓋をして、ここで勝ちさえすれば、世間の評価を覆すことができる。CSはペナントレースとは別物の戦いといっていい。
とはいえ、CSの第1ステージで勝つことだけに焦点を絞るべきではないと思う。2位チームには本拠地で戦いを迎えられるという営業的なアドバンテージはあるにせよ、大事なのは、ここで勝つことよりも最終的な敵であるペナントレースを制した巨人や楽天を意識するべきであるということだ。
阪神にせよ、広島にせよ、西武にせよ、ロッテにせよ。
CSの第1ステージの戦いを通して、いかに巨人や楽天との戦いをイメージできるか。
選手の起用を含め、投手の継投など、最終ステージで勝つために、どう勝っていくかの采配がカギになる。
阪神の空気を作る「Gratiii」ポーズ。
中でも、3年ぶりにCSの舞台に帰って来た阪神タイガースの戦いが気になる。
今季、巨人に次いで2位となり、最大貯金17を記録した。セ・リーグの中で唯一、巨人と肉薄した戦いを繰り広げてきた。
特筆すべきは、メジャー帰りの西岡剛がさまざまな面でチームに勢いをもたらしていることだろう。
関西人気質でお調子者の西岡は、関西の球団でありながら、主力に関西人が少なくおとなしいチームを元気づけた。生え抜きで関西人の関本賢太郎との掛け合いは、吉本新喜劇を見るかのような明るさを提供した。彼ら二人で編み出した、ホームラン時にスタンドに向かってポーズをとる「Gratiii(グラティ=感謝の意味)」は、今年の阪神の威勢を象徴している。
西岡であれ、マートンであれ、藤浪晋太郎であれ、どんな若手であれ、あの輪に入って弾ける。
他球団からは批判の声も上がっているようだが、昨今の阪神にはなかったムードといえる。