野球善哉BACK NUMBER
西武・渡辺監督の代打策に思う――。
勝利と育成の狭間で揺れるCS争い。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/20 12:20
来季への準備に意識を割いた日ハム・栗山英樹監督とは対照的に、1勝にこだわった西武・渡辺久信監督。この哲学の差がどう出るかは、長い目で見守りたい。
チーム解体寸前まで追い込まれた日本ハム。
昨年のチームからは、田中賢介と糸井嘉男が抜けている。糸井とのトレードで入団した大引啓次などのプラス要素があったとはいえ、チームをひとつにしていくには難しさもあった。WBCに出場していた稲葉篤紀の不調が重なり、エース・武田勝も故障がちだった。救援陣だけは昨年と同様に好調を持続していたが、投打ともに苦しさが垣間見えてのスタートだった。
交流戦の中盤を迎えたころには借金が今季最大となる「10」にまで膨れ上がっていた。加えて、二刀流に挑戦する大谷翔平への起用の難しさもあって、チームはなかなか浮上のきっかけをつかめなかった。
交流戦の終盤から立て直し、一時は貯金もできたが、7月中旬から失速。8月下旬には28本塁打を放っていた主砲・中田翔が死球により戦線を離脱し、その後は競り負ける試合が増えていった。9月に入ってからは、キャリアハイのペースで好成績を収めていた大引までもが右肘痛で登録を抹消された。
稲葉、小谷野栄一らのベテランがスタメンに名を連ねていたとはいえ、この日の日本ハムは、「将来のみを見据えた布陣」といってくらいのオーダーとなっていた。
異常さが際立った、日本ハムの上位打線。
顕著だったのは、1番~4番までのオーダーである。
3年目の西川遥輝が1番、2番には2年目の近藤健介が入り、3番はルーキーの大谷。ポジションも、内野手の西川は左翼に回り、捕手の近藤が右翼手、大谷はDHと試行錯誤が感じられた。4番は前日に続き陽岱鋼。陽は4番タイプではないが、栗山監督には意図があった。
「いつか(陽)岱鋼には4番を打たせてみたかった。というのも、岱鋼はさ、どの打順においてもそこの役割を果たそうって思ってくれる選手なんだ。(中田)翔がいる限りは、4番は難しいんだけど、一度、4番に座らせることで、いい経験にもなると思った」
一方の西武は、開幕当初は先発陣が奮闘し、チームは好位置をキープ。
しかし、WBC出場の牧田が本調子から遠く、夏場までエースとして君臨した菊池雄星が左肩痛で戦線離脱。岸孝之や野上亮磨、十亀剣が粘り強く投げてはいたが、開幕当初から懸案事項だった救援陣がコマ不足を露呈し、試合終盤に救援陣が打ち込まれる試合が多く、今の順位になっていた。