野球善哉BACK NUMBER
西武・渡辺監督の代打策に思う――。
勝利と育成の狭間で揺れるCS争い。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/20 12:20
来季への準備に意識を割いた日ハム・栗山英樹監督とは対照的に、1勝にこだわった西武・渡辺久信監督。この哲学の差がどう出るかは、長い目で見守りたい。
栗山監督が若手に強攻策をとらせ続けた理由。
一方の日ハム打線は、牧田を相手に6安打1得点のみ。歯が立たなかったといってよかった。
しかし1回表、西川が内野安打で出塁した時には、2番の近藤には送りバントをさせずに強攻(結果は一塁ライナーで併殺)。3回表、無死一、三塁の場面でも近藤にはそのまま打たせている(二塁ゴロ併殺打)。送りバントやセーフティースクイズを好む栗山監督が、これほど強攻するのは、本職ではないポジションを守らせてまで試合に出場させている近藤への大きな期待があるからだ。
試合後、栗山監督は「一生忘れない」と1勝5敗に終わったこの1週間の2カードを総括した。「この前の(負けた)ソフトバンク戦は紙一重の試合があった。逆に、去年だとウチが勝った時も紙一重なところもあった。その差はどこにあるかを考えなくちゃいけないんだと思う」と複雑な胸中を吐露していた。
8回裏の代打の場面は、坂田遼にしてほしかった……。
一方、勝った西武は、見事な試合運びだった。
復活した片岡や中村が適時打を放ったのは、今の状態の良さを示すものであっただろう。7番で先発したルーキーの金子は2安打1四球1盗塁と、シ―ズン序盤を思わせる輝きをみせた。試合後に金子は、試合を振り返りながら、来季への希望までを語っていた。
「今日は球も見えましたし、タイミングも取れていたし、いいバッティングができました。シーズン序盤の無我夢中で突っ走っていくというスタイルのままでは、この先やっていけないことは自分でも分かっていました。自分で考えてプレーするところまで来れたのは、いい経験ができているからだと思います。一日一日がこれからの自分に繋がっていくと思うし、無駄な打席や1球がないように、やっていきたい」
この時期の4位と5位の対戦は、観客からすると捉えどころがない試合と思われたかもしれないが、来季の戦いが窺いしれる、見所の多い試合でもあったのだ。
ただ、来季を見据えて……ということであれば、8回裏の、あの場面の起用には別の選択肢を選んでほしかった。
今シーズン、右肩を脱臼して離脱する5月末まで.385の打率を残し5本塁打25打点とチームの核になりつつあった坂田遼。8月30日の故障復帰後は力を発揮できていなかった、この背番号「31」に、浮上のキッカケを与えてほしかった。
代打はカーターではなく、坂田遼であっても良かったのではないか――。