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結果だけでは読めない今年のドラフト。
パ・リーグで最も成功した球団は?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byTadashi Hosoda
posted2010/11/10 10:30
早大の斎藤、大石は11月3日の早慶優勝決定戦で、ともにマウンドに立ち、1位指名に恥じぬ投球を見せた
2010年ドラフト会議を振り返ると、セ・リーグ(以下セ)にくらべてパ・リーグ(以下パ)が交渉権を獲得した選手のほうが華やかだ。
“ハンカチ王子”の異名で知られる斎藤佑樹(早大→日本ハム)、早大の守護神として活躍し、6球団の1巡入札が競合した大石達也(西武)は揃ってパの球団に指名された。
斎藤に1巡入札したのはセがヤクルト1球団だけなのに対して、パは日本ハム、ロッテ、ソフトバンクの3球団。また大石には西武、オリックス、楽天のパと、阪神、広島、横浜のセで半分半分。これでわかるように、パは全球団が斎藤と大石に入札している。パがスター選手をリーグ全体で獲得に向かうのに対して、セは実質本位で指名選手を決めるという体質。どっちがいいとは言えないが、この姿勢の差が、アマチュアのスター選手がパに流入する原因になっている。
'06年 田中将太(駒大苫小牧)←楽天、日本ハム、オリックス(以上パ)、横浜(セ)
'07年 中田翔(大阪桐蔭)←日本ハム、ソフトバンク、オリックス(以上パ)、阪神(セ)
'09年 雄星(花巻東)←西武、日本ハム、楽天、(以上パ)、中日、ヤクルト、阪神(以上セ)
近年のパの人気を考えるとき、リーグを挙げてのスター獲得作戦を見逃すことはできない。そうした傾向は今回のドラフトにも見られた。
ダルビッシュが去った後の準備ができた日本ハム……90点
今季の日本ハムは観客動員数が前年から約5万人減少した。
ダルビッシュ有のメジャー移籍が極めて近い将来に訪れることは間違いなく、それに代わるエース候補を獲得することは急務だが、それは来年以降の課題で残しておき、人気・存在感では“10年に1人”の逸材の斎藤を優先して獲得した、というのが偽らざる思いだろう。しかし、東京六大学リーグで31勝した斎藤の実力も本物。先発候補がダルビッシュ、武田勝、ケッペルまでは万全でも、それ以外の糸数敬作、八木智哉、オビスポは頼りないので、斎藤をはじめとする大学卒の有望新人投手、3巡乾真大(東洋大)、4巡榎下陽大(九州産大)を獲得できたのは球団にとって大きかった。
「(大石を)先発投手として」と言ってしまった西武……90点
西武の今シーズン終盤の失速はリリーフ陣の崩壊が原因である。とくに中継ぎ陣の不安定さは目を覆うばかりで、岡本篤志(防御率3.09)、長田秀一郎(同3.31)、小野寺力(同3.67)、藤田太陽(同3.91)は揃って防御率3点台。実は彼らはまだマシなほうで、野上亮磨(防御率5.14)、土肥義弘(同6.50)、大沼幸二(同7.71)、星野智樹(同8.10)、工藤公康(同10.50)は、リリーフ投手の体をなしていないほどの崩落ぶり。そこへ早大の守護神として活躍し、通算10勝4敗、防御率1.63の成績を挙げた大石達也を1巡で獲得した。これで100点満点の指名だと思ったが、渡辺久信監督は交渉権確定直後のマイクパフォーマンスで「(大石を)先発投手として育てます」と宣言。この発言によって10点減点することにした。
2巡牧田和久(日本通運・投手)は渡辺俊介(ロッテ)2世と形容しても違和感がない超絶技巧派のアンダースロー、3巡秋山翔吾(八戸大・外野手)は栗山巧と同型の“打って・守って・走れる”チャンスメーカーで、ともに即戦力の魅力がある。