野球善哉BACK NUMBER
オリックスを去った名コーチを想う……。
藤井康雄がソフトバンクを変える!?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/11/10 13:30
日本シリーズを戦った球団を除くチームの、来シーズンへ向けた戦いがすでに始まっている。
コーチ陣の組閣が発表され、秋季キャンプもスタート。どのチームも日本一を目指すべく準備に余念が無い。
その中でもっとも気になった組閣人事は、ソフトバンクの一軍打撃コーチを務めることになった藤井康雄氏である。
オリックス一筋の藤井氏が、他球団のコーチを務めるということ――。
有能なコーチであれば、現役時代の所属球団にかかわらず、他球団のコーチを務めることは不思議なことではないのだが、オリックスの顔として名を馳せた藤井氏が、オリックスの幹部にならずして、他球団の、しかも一軍の打撃コーチに就任するとは、オリックスファンにしてみれば思ってもみなかったことだろう。
現役時代からオリックスの顔として活躍したスラッガー。
藤井氏はいわずとしれたオリックスの顔である。
現役時代に放った代打満塁本塁打記録は今も破られていない。通算の満塁本塁打では王貞治氏に次ぐ歴代2位。「満塁男」の異名をとるほどのスラッガーだった。
'02年に現役を引退後、'03年から'06年まで二軍であるサーパスの打撃コーチ。'07年からは編成部に入り、'08年は関西担当のスカウトに就任。'09年にふたたび二軍打撃コーチに復帰したかと思うと、昨年の秋からはまたもスカウトに逆戻りとなっていたのだ。
藤井氏のコーチ時代で、最大の功績となったのがT-岡田を育て上げたことだ。
T-岡田の入団した'06年に二軍コーチをしていたのが藤井氏で、'09年にも再びタッグを組んでいる。T-岡田がブレークを果たす今年まで、'06年と'09年にしか一軍昇格を果たせていないところを見ても、どれほど藤井氏にT-岡田への影響力があったかがうかがい知れる。
昨年6月にT-岡田を取材した時には「藤井さんが独学で勉強された理論をもとにやっているのですが、それが自分には合っている」と話していたほどである。その秋、T-岡田はプロ初本塁打を含む7本塁打を記録し、今年の大ブレークへとつなげたのだ。
彼がスカウトを担当していた時などは、その人間性に魅了され記者陣は群がったものである。コーチであれスカウトであれ、どちらの仕事に就いてもカリスマ的な魅力を放つ彼には、いずれオリックスの監督を務めるのだろうと思わせる雰囲気があった。