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素直に優勝を喜んだソフトバンク。
“真の”リーグ優勝までの苦節7年。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byKYODO

posted2010/10/04 11:55

素直に優勝を喜んだソフトバンク。“真の”リーグ優勝までの苦節7年。<Number Web> photograph by KYODO

 いい光景だった。

 先日、ソフトバンクは楽天戦(Kスタ宮城)の途中でリーグ優勝を決めた。デーゲームでマジック対象チームの西武が日本ハムに敗れたためだ。

 最初は、試合中だったので自粛するのではないかと思っていた。

 だがソフトバンクは、試合進行に支障のない範囲で、最大限の喜びを表した。

 ベンチ内でそれぞれががっちりと握手をし、タッチをかわし、拳を突き上げた。一塁守備についていた小久保裕紀は人目もはばからず涙を流した。

 年間を通して戦い、雌雄を決するということ。その重さが十分に理解できるシーンだった。

 勝っても、喜んではいけない、いや、喜んではいられない――。

 '07年にクライマックスシリーズ制度が採用されて以降、形式的にリーグ優勝の儀式は行なっても、どこかにそんな心理が透けて見えたものだ。

 わからないでもない。たとえリーグ優勝を決めてもCSで敗れれば日本シリーズに進出できないからだ。「リーグ優勝」という冠はついても、むしろそれだけにCSで敗れると「日本シリーズを逃した」という汚名が余計に目立ってしまう。

 だから、内心、ソフトバンクの喜びようを見ていて、心配になったことも確かだ。

 ソフトバンクといえば'04年、'05年の悲劇がある。

シーズン1位なのに「リーグ優勝」になれなかったトラウマ。

 '04年からパ・リーグでは独自にプレーオフ制度を採用したのだが、その最初の犠牲者になったのがソフトバンクだった。しかも2年連続。

 両年ともシーズン1位通過を果たしたにもかかわらず、プレーオフで'04年は2位チームの西武に、'05年も同じく2位チームのロッテに敗れた。その頃は、プレーオフの覇者にリーグ優勝の栄誉が与えられていたため、ソフトバンクはシーズンで最高の勝率を上げたにもかかわらず、2年続けて何の栄誉も得られなかったのだ。

 当時のソフトバンクは黄金時代の到来を予感させる力があったが、あの悲劇で時代を作り損ねた感がある。

 '07年に新たにCSが導入されてからは、シーズンで1位になったチームはリーグ優勝チームとして認められるようになった。

 だが、初っぱな、リーグ優勝チームの巨人がCSで2位中日に敗れ、日本シリーズに出場できなかった。その際、中日はCSを制したものの、シーズン2位チームということで胴上げを自粛している。

 このあたり、両者の心理は実に複雑だ。互いに勝者ではあるものの、どこか素直に喜べないのだ。

【次ページ】 試行錯誤の末、ようやく形になってきたプレーオフ制度。

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