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上原浩治がOKなら、ダルビッシュは?
メジャーで成功する投手の条件とは。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/10/05 10:30

上原浩治がOKなら、ダルビッシュは?メジャーで成功する投手の条件とは。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

投手としての才能が超一流なのは衆目の一致するところであるダルビッシュ有。ただメジャーへ行くとなると、生活環境の変化やシーズン中のチーム移動の苦労など様々な困難があるのも事実。心身ともにタフでなければいけないが、果たして……

 メジャーリーグで、シーズン後半において一番惚れ惚れするピッチングをみせていた日本人投手と言えば、間違いなくボルチモア・オリオールズの上原浩治投手である。

 真っ直ぐの切れ、フォークの落差……。8月22日にクローザーとして初登板して以来、背番号19はすっかり巨人時代の輝きを取り戻し、その才能を改めて見せつける投球を披露していた。

 だが、だ。その投球内容が示すように、投手としてのポテンシャルの高さは間違いないのだが、やはり最大の問題は1年間を通して、肉体がそのポテンシャルの高さを支え続けられるかどうか、ということになる。

 実はメジャーで成功するための最大の条件は、球の速さでも、変化球の切れでも、制球力でもない。

 一番の条件は、肉体の強さなのだ。

 逆に言えば、いくら才能があっても、体の芯に強さのない選手は、生き残っていけないということだ。

先発、抑え、中継ぎに……高橋尚成のフル回転ぶり。

 この上原と対照的だったのが、同じ巨人出身の投手で、今季からニューヨーク・メッツでプレーした高橋尚成投手だった。

 投手としての才能を比較すれば、軍配は上原に上がるかもしれない。

 だが、高橋にはもちろんメジャーでやっていける才能と、それに加えて体の強さがある。

 その肉体があるからこそ、メッツでは先発に、抑えに、中継ぎに、とチームから求められた過酷な登板条件を次々とクリア。その上で好投できるコンディションを維持して、結果を残したわけだ。

 それがメジャーでやっていく、ということの現実なのだ。

 それはかつてメジャーで成功した日本人選手をみれば一目瞭然ともいえる。

 野茂英雄投手に佐々木主浩投手然り。野手でもイチロー、松井秀喜両外野手に共通するのは、いずれも頑強な肉体を持った選手たちだということだ。

 MLBの公式サイトで、殿堂入りしている名物コラムニストのピーター・ギャモンズ記者が、今オフにポスティング制度でメジャー移籍が有力視されている日本ハム・ダルビッシュ有投手に関する大リーグのスカウトの話を紹介して話題となった。

「彼は決してエース格ではない。日本では打者を圧倒できるが、メジャーではそうはいかないだろう。いい投手だが、特別な投手ではない」

 そのスカウトは厳しい見解を示している。

【次ページ】 ダルビッシュのポテンシャルは凄いのだが……。

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