Number Do ExBACK NUMBER
ウルトラトレイル・マウントフジ。
サポートから見た100マイルの世界。
~第2回UTMF密着ドキュメント~
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph bySho Fujimaki
posted2013/07/18 06:00
女子優勝を飾ったクリッシー・モール。自らをサポートしてくれた友人とのゴールは温かい拍手に包まれた。
制限時間32分前のゴール。
このエイドで、僕らは12時間以上過ごすことになった。ランナーズアップデートやツイッターを小まめにチェックし、コンビニやスーパーへ手分けして買い出しに行き、駐車場に置かれたストーブの前で別チームのサポートと談笑しながら、いつ来るか分からない選手の到着を静かに待つ。
僕たちサポートは、一番速い選手を基準に常に先回りする必要があるため、10人の選手を完璧にサポートするのは不可能だった。特に最後尾を走っていた石井基善に対しては、ほとんど何も出来ずにいた。
ランナーズアップデートを見ると、石井が常に関門時刻と闘っていたことが分かる。A3を出たのが関門の22分前。A5で32分前、A8で45分前。最後のエイドで彼を待つ間、太陽が再び顔を出し、富士山を照らしはじめていた。
ひょんなことで知り合った同い年40歳の石井は、東京・駒沢でparkという加圧トレーニングジムを経営し、数多くのトレイルランナーを指導している。
「俺がここで完走しなかったら、ジムのメンツが立たないでしょ!」
そう言いながら、彼がA10を出たのは関門の僅か5分前のことだった。「ヒヤヒヤさせるのもいい加減にしてくれ!」と心の中で文句を言いながら、最後の1人を送り出したことで、僕たちサポートの任務は静かに終わりを迎えた。スタートして38時間が経過していた。
関門時刻と闘い続けた石井は、45時間28分18秒で多くの仲間に囲まれながらフィニッシュラインをまたいだ。制限時間32分前のことだった。
完走したランナーにも、サポートをした僕らの顔にも無精ひげがザラつき、その感触が長くて濃い3日間を表していた。お祭りがこうして幕を閉じた。
大会そのものが時間とともに醸成され、濃密なものになっていく。
ウルトラトレイルは、ランナーの人間性そのものがあぶり出される競技だ。自分をさらけ出して走るランナーに接することで、僕らサポートも100マイル先のゴールを目指して共に旅をする感覚になっていく。
ただ、それはサポートだけではないのかもしれない。100マイルという超長距離、3日間という長い時間、そして僕らを圧倒する大自然。そんなスケール感が、ランナー、サポート、応援する人たち、そして運営者をも包み込み、大会そのものが時間とともに醸成され、濃密なものになっていくように感じた。
妊娠8カ月の身体でクリッシーをサポートし続けた和木は言う。
「走ることを通じて人と出会い、世界中を回れることの素晴らしさをクリッシーはよく分かっている。だから彼女は自然に対して、他者に対して、そして自分に対してもいつも謙虚でいられる。そして常に感謝する心を持ち合わせている。1人の人間として尊敬出来る彼女をサポートできたことが嬉しかった」