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ウルトラトレイル・マウントフジ。
サポートから見た100マイルの世界。
~第2回UTMF密着ドキュメント~
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph bySho Fujimaki
posted2013/07/18 06:00
女子優勝を飾ったクリッシー・モール。自らをサポートしてくれた友人とのゴールは温かい拍手に包まれた。
前半のヤマ場、西富士中学校(54.9km地点)。
午後8時30分頃、僕らは西富士中学校に到着する。前半のヤマ場であり、1500m前後の山が5つ連なる天子山塊を抜けてくるエリアだ。
21時過ぎ、ここでもジュリアンがトップ。すぐ後ろに海外からやってきた有力選手が続いていく。
トップ選手のエイドステーションでの振る舞いは圧巻だった。特にサポートクルーを擁したジュリアンの時間の過ごし方は、F1レースのピットインさながらで、手早くゼリーなどを口にし、水を補充し、1分1秒を争うように飛び出していった。
22時33分。クリッシーが女子1位でやって来る。
ザックのポケットから使用済みのゴミとなった行動食の袋を取り出しては、テーブルに並べてある補給食の中から自身が必要と思うものと入れ替える。そして、地元名産・富士宮やきそばを食べながら和木が言うこの先のコースガイドに耳を傾けていた。
0時を過ぎ、日付が27日になった頃、僕らの仲間で最初にやって来たのは、予想通り並木だった。そしてチーム最後尾を走る石井がやって来たのは、並木から遅れること5時間20分。制限時間の1時間前、朝5時30分前だった。選手間にばらつきが見え始め、僕らサポート隊もわずかに疲れを感じるようになる。耐久戦の序盤に立っていることを実感した。
A4 富士山こどもの国(79.3km地点)。
富士山こどもの国に向かう車中で、助手席に座る友人から驚きの声が上がる。現在、日本人が1位なのだ!
エイドでの様子を見ていた僕らは、「今年もジュリアンに死角なし」と考えていた。仮に他の誰かだとしても、まさか日本人とは想像していなかったのだ。トップに躍り出たのは原良和さん。意外な展開だなと驚き、それと同時に日本人として心が踊ったのをよく覚えている。
テレビやラジオの中継がないUTMF。レースの動向を得る情報源は主に3つだけだった。
1つは、大会側が用意したランナーズ・アップデート。チェックポイント毎に「到着時刻」と「出発時刻」が更新されていく。残りの2つはランナーやボランティアなどの関係者がツイッターに書き込むツイート、そしてサポート同士の情報共有だ。
だが、断片的な情報でも走っている選手の様子が想像できるし、情報の少なさがこの大会のスケールを物語っているような気がした。