オフサイド・トリップBACK NUMBER
セリエAの名門ローマが崩壊寸前!!
なのに……監督の未来が明るい理由。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byBongarts/Getty Images
posted2010/10/03 08:00
9月28日にはルーマニアのチーム相手にCLで初勝利をあげたラニエリ。名門ローマのプライドは保たれるのか?
「次はリッピ? はたまたレオナルドか?」
シーズンが開幕して1カ月しか経っていないのに、早くも監督交代が噂されている名門クラブがある。中田英寿が所属していたことでも知られる、セリエAのASローマだ。
たしかにチームの惨状は限度を超えている。シーズン序盤戦だとはいえ、第5節が終わった時点でのポジションはなんと18位。1勝2敗2分けで得失点差がマイナス4という状態では、クラウディオ・ラニエリ解任の噂が流れるのも当然だといえる。
しかし、これは実に不思議な話なのだ。
基本的な選手の顔ぶれは、昨シーズンにセリエAで2位になったときとそれほど大きく変わっていないし、ラニエリが指揮を執っているのも昨シーズンと同じ。他の下位チームの戦力が一気に上がったわけでもない。 となれば一番の理由として考えられるのは……やはりメンタル面ということになるのだろう。
事実、今のローマからは覇気や一体感というものがまったく感じられない。CLのバイエルン戦では味方サポーターからまで「ヤル気がない」と散々酷評され、ようやくリーグ1勝目を挙げた最近のインテル戦にしても、ハツラツとプレーしていたのはむしろインテルの選手たちの方だった。
モチベーションが低下した選手を鼓舞できない監督って……。
特にひどいのはトッティ。攻撃の大黒柱としてボールに絡む場面は多いし、チームの中で一番うまい選手であるのは間違いないのだが、小手先のテクニックだけで漫然とプレーしているようにしか見えない。トッティが「倦(う)んでいる」のは一目瞭然だった。
このような状況の中、ラニエリ監督はバイエルン戦の後に「チームは(肉体的に)疲れているわけじゃない」と発言。昨シーズン、終盤まで優勝争いを繰り広げたことをさして「あそこまで精神的なエネルギーを使ってしまうと、もう一度エンジンをかけるのに少しばかり時間がかかるんだ」と言って選手たちをかばった。
ラニエリのコメントは、問題の本質をズバリと表している。
ただしそれはラニエリの指摘が正しいという意味においてではない。彼の「甘さ」こそが低迷をもたらしているということが、よくわかるという意味においてだ。
CLで対戦したバイエルンであれ、セリエAで戦ったインテルであれ、昨シーズンの精神的な疲れ云々などといまだに言っているチームはどこにもない。そもそも選手が精神的な疲労を抱えているのであれば、新たな目標を示して選手の気持ちを焚き付けるのが、監督本来の役割ではないのか。