野球クロスロードBACK NUMBER
“落合竜”優勝へのカギは、
定石外れの「勝利の方程式」。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/09/08 12:30
「負け方が非常に似ている」
巨人の原辰徳監督は、5日のゲーム終了後、ため息まじりに敗戦の弁を述べた。
指揮官を落胆させたのは、言うまでもなく先週末に3タテを食らわされた中日戦である。全試合僅差ながら、巨人に全くといっていいほど主導権を与えず、2位の座を奪い、一気に突き放した。
中日側からすれば「似た勝ち方」となるが、ざっと振り返ってみるとこうなる。
3日、5回に森野将彦の二塁打と和田一浩の2ランで3点を先取。6回と8回に1点ずつ返されるも1点差を守り3対2。
4日、初回に森野のソロで先制し、4回には2点を追加。投げては山本昌が最年長記録を更新する45歳の完封劇で3対0。
5日、初回に和田の2ランで先制すると、5回にはブランコのタイムリーで3点目。中田賢一、浅尾拓也、岩瀬仁紀の投手リレーで逃げ切り3対1。
3日のゲーム前の時点で、中日はナゴヤドームで対巨人戦6連勝中。データを見る限り精神的に中日に分があるのはたしかだが、3連勝したのにははっきりとしたわけがあった。
すべては3日の初戦。このゲームに“落合竜”らしい戦いぶりが表れていた。
まさかの緊急登板に投手自身も驚く早めの継投術。
まず、指揮官の落合博満は、先発予定だったネルソンを前日の広島戦に回し、8月26日の巨人戦で7点を奪われ2回でKOされた吉見一起を立てた。落合は決して吉見を「エース」とは呼ばないし、前回登板の悪いイメージを引きずっているという懸念もあっただろうが、今シーズン、同カードで4勝(2日時点)を挙げている右腕の安定感に勝機を見出した。
だからといって、吉見に勝負の命運のすべてを託さないのが落合の抜け目なさでもある。初回から制球に全く乱れがなくフォークも冴えわたっていたが、3対0で迎えた6回1死の場面で坂本勇人に一発を浴びると、落合は迷うことなく動き出した。
「あそこまで。あれ以上は無理。あんなところでホームランを打たれたんじゃ、そこから先はいけないじゃん」
2日後に一軍登録を抹消されることとなる右ひじの違和感が降板の真意かどうかは分からないが、この後の采配も大胆だった。
坂本の後に左打者が続くことから左腕の小林正人で繋ぐかと思いきや、ここで、本来なら7回の登板だったはずの左の中継ぎエース・高橋聡文をマウンドへ送り込んだのだ。
「まさか、あの場面でくるとは……」と、高橋自身も緊急登板に驚いているほどだ。7月8日の横浜戦以降、無失点を続ける左腕は、準備不足のためか松本哲也、小笠原道大に連打を許すが、4番・ラミレスを併殺に打ち取り、7回も三者凡退と指揮官の期待に見事に応えた。
この早めの継投に対する試合後の落合の答えはたったひと言、「ほかに誰がいる?」だった。