野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
セ・リーグ制覇への鍵を握る男たち。
阪神、中日、巨人の救世主は誰か?
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/09/13 12:50
「大事な時に勝ってくれる、彼は救世主ですよ」
阪神・真弓監督が最大の賛辞を送った。
「本当に救世主だね」
女房役の城島健司もその冴えた投球には脱帽するしかなかった。
ペナントレースも最終盤に差し掛かったこの時期、タイガースに待望の救世主が現れた。メシア・フロム愛媛県。19歳の高卒ルーキー、秋山拓巳である。
今季の阪神は開幕当初からとにかく先発の駒不足に悩まされた。開幕投手の安藤は絶不調。岩田、能見の姿も消え、若手の上園、鶴、小嶋らは揃って結果を残せない。さらに、8月中旬にはベテラン下柳までもがKOされて二軍降格が決定すると、真弓監督も、ついには祈るような気持ちで新聞記者にこんなことをつぶやいていた。
「救世主に出てきてほしい。誰が上がるかまだわからんけど……」
真弓監督の切なる願いが天に届いたのか、その直後に一軍に昇格したのが秋山だった。8月21日の巨人戦で、秋山は一軍初先発・初登板で好投を果たすと、その後の3試合で3連勝。9月12日のヤクルト戦を4安打無四球で完封し、ついに待望の「救世主」が誕生した。
秋山に1年間戦う力があるかどうかは別として、ペナントの最終局面、そしてCS、日本シリーズと続く戦いには、チームに勢いを与えてくれるならば、救世主でもラッキーボーイでも、秘密兵器でもなんでも、どこのチームだって喉から手が出るほど欲しいはずである。
阪神では秋山が「救世主」の名を戴いたが、他のセ・リーグ上位2チームはどうだろうか?
選手を奮起させる落合監督の怪しい言葉たち。
現在首位のドラゴンズは、週末の横浜戦もなんなく勝ち越して混戦のセ・リーグを一歩リード。しかも9月に入ってから9勝1敗1分け、月間防御率0.98と勢いも十分で、現在最も覇権に近いところにいるといえる。
8月までのドラゴンズは上位に喰い込んでこそいたが、ショートにコンバートした荒木はエラーを連発するわ、ブランコは二軍落ちするわ、守護神の岩瀬も打たれるわと、決して盤石の戦いとはいえなかった。
それが最後の直線に入ってのこの追い込みである。この躍進において「救世主的」な活躍をしている存在を挙げるとすれば、今季初登板の8月7日から完封を含む5勝を上げた45歳の大ベテラン山本昌だろうか。
しかし、ここは別角度である人物に注目したい。山本昌の復帰3試合目となった8月21日のヤクルト戦、序盤で崩れかけたこの大ベテランにカツを入れ「内容は詳しく言えないけど、ハッと気づくような言葉だった」(山本昌)と見事にペースを取り戻させた、落合監督とその言葉に注目したい。
投げ掛ける言葉は、禅問答か暗号か。落合監督の言葉はとにかく難解であることが多いことで知られている。