野球クロスロードBACK NUMBER
二塁打量産中の「打者・大谷翔平」。
好調支える“流し打ち”と“中田翔”。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/06/12 12:25
「(打者として)塁に出て、息が上がったままマウンドに行っても、間合いを長くしたりして工夫していかないと」と語るなど、“5番・投手”の準備に余念のない大谷。
自己分析能力の高さを感じさせる流し打ちの多さ。
大谷は打撃好調の背景をこう語る。
「基本的に、逆方向(レフト)に打つことは意識していますし、ずっとやってきていることなので。そういう打球が出ているうちは(調子が)いいし、流していれば結果も出てくれると思っているので」
左打者の大谷は、普段の練習からセンターよりレフト方向の打球を飛ばすことを意識する。その成果が、全21安打中、内野安打を含めれば実に13本がセンターより左方向と、数字にも反映されているわけだ。
ここまで逆方向への打球を意識しているのは、彼に鋭敏な自己分析能力があるからだ。大谷は、「引っ張っていい打球が出ていませんから」と現実をしっかりと受け止め、自身の考えを述べる。
「バットを強振すれば引っ張ることはできますけど、プロのピッチャーはボールに力がありますし、甘いボールが来ても力んでしまったりするので」
自分の形で打つために逆方向に特化した打撃を心掛け、実際、数字にも結び付いている。大谷の判断は決して間違っていないのだ。
「中田さんが打ってくれるので」5番でも気負わず打席に立てる。
そしてもうひとつ、打撃好調の要因がある。それは、5番という打順。
大谷が初めて5番を任されたのは、藤浪晋太郎との「ゴールデンルーキー対決」が話題となった5月26日の阪神戦だった。この試合で2安打をマークして以降、5番としてこれまで4試合に出場し、15打数8安打と抜群の結果を残している。
「いい場面でいい打球が打てるようにしたいです」という大谷の気概は、どの打順でも変わりはない。しかし、5番というポジションでひとつ意識していることがある。
それは、4番の中田翔の存在だ。
「中田さんが打ってくれるので」。この言葉からも、大谷の中田への信頼感が窺える。
打率3割1分3厘、13本塁打、39打点、得点圏打率3割3分3厘。安定した成績を残している4番の存在が、大谷に過度なプレッシャーを与えず、フラットな状態で打席に立たせているのだろう。だからこそ、レフト方向への打球という自分のスタイルを崩すことなく、大谷は5番の重責を果たすことができるのだ。