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白紙に戻る巨人・阪神の米国開幕戦。
戦略なきメジャー礼賛は時代錯誤!? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2013/06/09 08:01

白紙に戻る巨人・阪神の米国開幕戦。戦略なきメジャー礼賛は時代錯誤!?<Number Web> photograph by AFLO SPORT

統一球導入、ボールカウントの順番を「ボール・ストライク・アウト」に変更、審判団のセパ統一、本塁打のビデオ判定導入など……様々な球界改革を行ってきた加藤コミッショナー。果たして開幕戦米国開催の夢は実現するか?

メジャーをお手本にして発展してきたプロ野球だが……。

 日本のプロ野球にとって、戦前、戦後を通じてアメリカとメジャーリーグはずっと“先生”だった。

 巨人がベロビーチキャンプを行なって、ドジャースの戦法を取り入れV9という前人未到の歴史を築き、日米野球ではその圧倒的なパワーに驚嘆するとともに、新しい打撃技術や、スプリット・フィンガー・ファストボールなど“魔球”に目を輝かせた。

 その一方で近年は「マネーボール」で注目された選手評価への統計学的アプローチと、それに基づくチーム編成の近代化も、メジャーリーグを“先生”としたものだった。

 そうして日本の目はいつも「アメリカ野球に追いつき、そして追い越せ」という正力松太郎遺訓そのままに、ずっとアメリカを見続けてきたものだったのだ。

 だが、その“先生”はそんなに優しくもなく、無償の愛を施してくれるわけでもない。

公式戦の米国開催に記念式典以上の意義は見いだせない。

 MLBはその世界戦略の一環としてアジアへの積極的な進出を図ってきた。今年の3月に行なわれたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)もそうした世界戦略の一環としての事業で、その狙いは直接的な経済メリットだけではない。日本、韓国(1次ラウンドで敗退して熱は短かったが……)、台湾での盛り上がりを見れば、その収支以上にグローバルマーケットの拡大という戦略的な成果は大きかったといえるだろう。

 一方の日本球界は、選手会のWBCボイコット問題を契機に、確かに権利問題やスポンサー料の分配など経済的な改善が論じられるようにはなってきた。ただ、WBCを利用した地域戦略的な球界活性化への将来像は、ほとんど話題にもならず、おろそかになったままというのが現実である。

 そうしてプロ野球80周年の記念イベントの目玉が、この米国での開幕戦開催だった。

 アメリカで公式戦を開催するという記念的意義だけはあるかもしれない。ただ、そこには日本の球界の将来につながる戦略的な意義や、これからの日本野球の発展に向けた構想は、残念ながらかけらも見受けられない。

 だとすると収支や選手のコンディショニングの難しさに、多少は目をつむってもやりきるだけの意味は見いだせない。計画が白紙になるのも当たり前のことではないだろうか。

【次ページ】 日本球界はアメリカよりもアジアの発展に注力すべき!?

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