プロ野球亭日乗BACK NUMBER
白紙に戻る巨人・阪神の米国開幕戦。
戦略なきメジャー礼賛は時代錯誤!?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFLO SPORT
posted2013/06/09 08:01
統一球導入、ボールカウントの順番を「ボール・ストライク・アウト」に変更、審判団のセパ統一、本塁打のビデオ判定導入など……様々な球界改革を行ってきた加藤コミッショナー。果たして開幕戦米国開催の夢は実現するか?
2014年に80周年を迎えるプロ野球の記念事業として構想が練られていた米国での巨人・阪神開幕戦が、実現困難な状況に陥っていることを6月4日付けの日刊スポーツが報じた。
この米国開幕は、当初の計画では来年3月にロサンゼルスのドジャースタジアムで巨人主催の1試合、アナハイムのエンゼルスタジアムで阪神主催の1試合を行なうというもので、すでに両チームの関係者が現地視察などを済ませている。
しかし日刊スポーツによると、過去に実績のないアメリカでの公式戦については、開催ありきではなく、成功裏に興行が行なえるかどうかをまず論議すべきとの意見が根強くなっているという。そうなるとチケットの売り上げなどの収支面や、選手の調整面の問題など困難な問題が山積しており、現時点では開催について白紙となっていると報じている。
そもそもこの米国での開幕戦開催はプロ野球80周年の記念事業として3期目を迎えた加藤良三コミッショナーが、並々ならぬ意欲をみせているイベントだ。
「年に1回、ファンが関心を持ってくれることを続けていきたい。今までは大リーグが一方的に来ているが、米国でもコンテンツとして、日本の野球は評価が高いと聞いている。試合をやったら案外、人気が出るんじゃないだろうか。西海岸なんかは日系人も多いわけですから」
昨年末にこの構想を明らかにした際に、コミッショナーは実現への可能性についてこう語っていた。
“意義”の裏側に見え隠れする日本球界のアメリカ追随。
米国はもちろん野球発祥の地であり、歴史を紐解けば、1934年の大日本東京野球倶楽部の結成と翌35年の米国遠征が、後の巨人軍誕生へとつながっていく。そういう意味ではそのときの米国遠征こそが、日本のプロ野球の原点だった。
その原点の地で日本のチーム同士の初公式戦を開催する。そこにはまるで純愛ドラマのような、ある種、きれいな“意義”があるのかもしれない。
ただ、である。
この米国開催という発想の裏側には、もう一つの日本のプロ野球のトラウマがある。
すべての目線がアメリカを向いてしまっている、アメリカしか見てこなかった歴史の象徴的なイベントであるということだ。