野ボール横丁BACK NUMBER
18歳の躍動と40歳のいぶし銀――。
“らしさ”を取り戻した日本ハムの逆襲。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/06/17 12:20
15日の快勝で、「これでもう一段階、良いほうにいけると思う」とコメントしていた稲葉。チームも自分自身も、これからが正念場となる。
日本ハムの、まさに「歴史」と「未来」が凝縮された攻撃だった。
6月15日に札幌ドームで行われた日本ハム対広島戦、1-1の同点で迎えた8回裏。広島のマウンドには1日に右脇腹を痛めて戦線を離脱し、14日ぶりの復帰となった前田健太が立ちはだかっていた。
7回まで4安打1点。最速151キロをマークするなど、そこまでは完全に前田のペースだった。
突破口を開いたのは、この日、初めて3番を任されたゴールデンルーキーの大谷翔平だった。ワンアウト一塁から、高めに浮いた外のチェンジアップを弾き、左中間を抜く二塁打で二、三塁とチャンスを拡大。
「それまでは手も足も出ない感じだったんですけど(三振、三振、中飛)、失投をたまたま打てた」と謙遜するが、失投を見逃さないことこそ一流打者の証である。
続くチームの若頭、4番の中田翔は貫禄の敬遠。
「歩かされるとは思ってなかった」
4回裏に監督の栗山英樹が「あれが4番」とうなった先制アーチをかけていただけに、広島サイドとしては当然の選択だった。
18歳ルーキーの二塁打に、40歳のベテランが応えた。
これでワンアウト満塁。
御膳立てが整ったところで、ベテランの5番・稲葉篤紀がレフト線を破る2点二塁打で応えた。
「(大谷)翔平の二塁打で球場の雰囲気が変わった」と、18歳の一打に刺激を受けた40歳の一振りでもあった。
その大谷が「本当に頼もしい先輩」と感嘆すれば、中田は「稲葉さんの方がやりにくいんじゃないかと思っていた」と当然のように語った。
稲葉のタイムリーで、ついに難攻不落の前田をマウンドから引きずり下ろした。結局、日本ハムはこの回だけで4点を挙げ5-1と引き離し、試合を決めた。