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“競馬ってそんなに儲かるの!?”
巨額馬券裁判が孕むさまざまな問題。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byHideki Yoshihara/AFLO Dite
posted2013/06/01 08:02
今回の裁判では、競馬場やWINSの窓口ではなく、全てオンラインで馬券を購入していたこともポイントとなった。
5月26日に行われた「競馬の祭典」第80回日本ダービーを制したのは、武豊が手綱をとるキズナ(父ディープインパクト、栗東・佐々木晶三厩舎)だった。
絶望的にも見えた後方から馬群を割って鋭く伸びたキズナの走りに、超満員の観衆が酔いしれた。この日東京競馬場を訪れたファンは13万9806人。入場人員が減りつづけるなか、過去10年ではディープインパクトが勝った2005年の14万143人に次ぐ多さだった。
その'05年以来8年ぶりの勝利を挙げ、自身の持つダービー最多勝記録を「5」に伸ばした武は、スタンド前で行われた勝利騎手インタビューで、「ぼくは帰ってきました!」と力強く言った。'10年3月の落馬事故以来、騎乗馬に恵まれない状況がつづいていただけに、復活を待っていた人が多かったのだろう、多くのファンが涙を流していた。
その夜のテレビのスポーツニュースでは武の流麗なフォームが何度も大映しになり、翌日のスポーツ紙には「武キズナ」の大見出しが踊った。
節目のダービーを絵になる千両役者が制し、天才騎手の完全復活とともに、競馬ブーム再燃の兆しまで見えはじめたような気がしたのだが――。
3年間で総額約28億円の馬券を購入し、約30億円の払戻金。
その3日前の5月23日、結果次第ではこのお祭りムードに思いっきり水を差すことになっていたかもしれない刑事裁判の判決がくだされた。
いわゆる「馬券裁判」である。
一体どんな内容なのか――。
馬券で稼いだ所得を申告せず、'07~'09年までの3年間に5億7000万円を脱税したとして、大阪市の元会社員の男性(39)が所得税法違反に問われた。今年2月7日の第3回公判で、検察側は懲役1年を求刑した。
この男性は、市販の競馬予想ソフトを改良し、'04年ごろからインターネット上でJRAの馬券を購入するようになった。元手とした100万円は順調に増えつづけ、'07年~'09年の3年間で総額約28億7000万円の馬券を購入し、約30億1000万円の払戻金を得た。その3年間の利益は約1億4000万円に上った。
それに対し、大阪国税局は、払戻金から当たり馬券の購入額のみを差し引いた約29億円が利益と認定し、大阪地検に告発。
男性は、外れ馬券の購入費も差し引けば、3年間で約1億4000万円しか利益を上げていないのに、5億7000万円を脱税したとして起訴されたわけだ。起訴されたことを受け、男性は勤続先を退社。地方税なども含め約10億円の課税処分を受け、これまで計約7000万円を納税、月8万円ずつの支払いをつづけ、預貯金も底をついたという。
裁判の争点となったのは、馬券で得た所得の種類と、必要経費の範囲だった。